国村隼(61)が19日、都内のベルギー王国大使館で行われたベルギー、フランス、カナダ合作映画「KOKORO」(バンニャ・ダルカンタラ監督、11月4日公開)会見に出席した。

 ベルギー人のダルカンタラ監督が来日したことを受けて、会見は特別に大使館で行われた。国村は「映画の発表を大使館でやるのは僕も初めての経験。緊張しています」と笑み。1979年(昭54)のNHK連続テレビ小説「鮎のうた」で俳優デビューしてから38年で、大使館での映画のイベントは初めてだと明かした。

 「KOKORO」は、福井県の東尋坊で自殺しようとしている人を思いとどまらせる活動をしている、元警察官の茂幸雄さんの人生をフランス人女性がつづった小説が原作で、フランスでは16年3月に公開された。夫と思春期の子ども2人を持つアリス(イザベル・カレ)が、長い旅から帰ってきた弟ナタンが、日本で生きる意欲を見つけたと語りながら突然、亡くなったことにショックを受け、日本を1人で旅する物語。国村は茂さんをモデルに描かれた、自殺願望を持つ人々に寄り添い自殺を思いとどまらせる元警察官ダイスケを演じた。

 劇中では英語のセリフでの演技が中心となるが、国村は流ちょうな英語を駆使し、演技派俳優として知られる日本での演技と、変わらぬ演技を披露している。それでも「聞くのは大体、分かるけれども、自分の思っていることを伝えるのは難しいレベル。でも英語圏の方がお客さんなので、日本人の英語に聞こえたとしても、セリフなので何を言っているか、意味が通じないといけないと思った。監督からは『その音は違う』と何度も直されました」と苦笑した。

 ダルカンタラ監督は、国村について「押しも押されもせぬ日本の名優で、国内外の監督がその演技に魅了されている。私もその1人」と絶賛。16年11月に日本人として初ノミネートされた韓国の青龍映画賞で、外国人俳優初の助演男優賞と人気スター賞の2冠を獲得するなどした国村の評価が、海外で高いことを強調。起用の理由については「スクリーンや実際にお会いした時に感じる存在感だけでなく、本当にシリアスな演技をするとき、恐怖を感じるとともに笑顔が子どものよう。そのギャップが大好きで、ダイスケを見いだした」と説明した。

 国村には監督だけでなく、質疑応答でも海外のメディアから演技への称賛の声が相次いだ。国村は会見の最後に「お尻がこそばゆい」と照れ笑いを浮かべた。

 ギュンテル・スレーワーゲン駐日ベルギー大使は「欧州では映画産業が盛んで、ベルギーも例外ではありません。ベルギーはダイバーシティ(多様性)に富んでおり、多数の言語が使われている。今後も、日本との合作映画が進めば」と今後に期待した。【村上幸将】