音楽プロデューサー小室哲哉(59)が19日に引退を発表した。会見する小室の姿をテレビで見て、23年前の1本の電話を思い出した。

 「遠峯がとられちゃいました」

 95年6月8日、当時売り出し中のアイドルだった遠峯ありさの事務所の人間からかかってきた。

 「何に?」という、こちらの問いに、「FRIDAYに撮られました」と返ってきた。そして「小室にも取られちゃいました」と、半ば泣き声だった。

 その日の午後になって、回ってきたFRIDAYの早刷りを見てすべてが分かった。当時20歳だった新進アイドル遠峯ありさが、ヒットメーカー小室の目にかなって恋人に。そして、小室のプロデュースで歌手として大々的に売り出すという話だった。すでに遠峯は、小室の事務所に移籍済み、芸能界の各所に根回し済みだった。

 その後、遠峯は小室と同じイニシャルTKの華原朋美になり「I BELIEVE」「I’m proud」などのヒットをとばした。そして、小室との破局後は迷走した。そんなことを思い出した。

 今年も1月は、2年前のSMAP解散、ベッキーゲス不倫騒動、昨年の狩野英孝淫行騒動に次ぐ、芸能大事件が勃発。

 そんなこんなで、1月から忙しい2018年の芸能界を、ざっと予想するとテレビがネットに完全に逆転される年になるのではないかと思う。

 NHKと日本テレビが放送を始めたのが1953年(昭28)。5年前は「テレビ60年」ということで、一般紙が連載を組むなど区切りの年として注目を浴びた。だが、65年周年の今年こそ、テレビがネットに引導を渡される年だ。

 世の流れからしても、5年前の60周年は、勤め人でいう満60歳、つまり定年だ。そして、今年の65歳は再雇用の期限が切れて、完全に引退を余儀なくされる年だ。つまり、今まで何とかしがみついていたアイデンティティー(主体性)の喪失だ。

 定年になり、再雇用も終わったテレビは、どこに行くのか。それはネットだ。記者は会社からは放送担当を拝命しているが、テレビを持っていない。ニュースはスマホでチェックするし、ドラマもバラエティーもすべてネットで見る。ニコニコ動画、フジテレビオンデマンド、テレ朝動画、ネットフリックス、Hulu、Amazonプライムと、可能な限りのネット動画の会員になっている。ドラマは地上波ではなく、PCの画面で無料のWiFi(ワイファイ)が使える喫茶「ルノアール」で見ることが多い(笑い)。

 そして、テレビを見てネット記者が書くニュースも、AbemaTV、ニコニコ生放送などネットからのものが多くなっている。とは言っても、ネットのコンテンツを創り出すのは、動画ではテレビ局の制作力にかなうところは少ない。テレビ各局もネットに注力している。

 テレビ各局は、今年12月1日には高解像度の4Kの実用放送が始まる。メディアの王様だったテレビが、その座を降りた時、どう変わるか。目が離せない。

 そして何より、紙媒体であり、ネットメディアもある、自分たちが生き残るにはどうすればよいのか。真剣に考える日々が続いている。