テレビの人気者から落語家になった、月亭方正(50)と桂三度(48)が、新宿・末広亭の深夜寄席「よしもと落語」(30日午後9時30分開演)に出演する。2人に聞いてみた。

 日本テレビ系「ガキのつかいやあらへんで!」などでダウンタウンにいじられる山崎邦正として人気者だった方正は、08年に月亭八方に入門した。2つの芸名を使い分けていたが、13年から方正に一本化した。「タレントと落語を分けてやろうと思っていたけど無理、同じ体ですからね。ネタによって、これは山崎邦正を出せるな、これは月亭方正で行かなアカンなとやっています」。今でも「ガキ-」では「山崎」「山ちゃん」といじられて笑いを取っている。

 バラエティーと落語の違いについて、方正は「テレビというのは団体芸。手ぶらで行っても、誰かがなんとかしてくれる」と言う。落語については「誰も何も助けてくれない。テレビの時は『子供の邦正』、落語の時は『大人の方正』で頑張っています」と話している。

 落語にはまったのは、39歳の時だ。故桂枝雀の噺を聞いて「ドッカーンと来ました。ヨッシャー! これやと」と振り返る。「40歳を前に武器を増やすという部分もなくはなかったんですが、でもそれだけじゃやれないですよね。だって、テレビだけやっていた方が、もうかるんですもの」。

 落語家になって2年ほどたった時、立川志の輔に「なんで落語家なの?」と聞かれた。「ぶち切れられるかと思ったんですが『すみません、2年前に初めて枝雀師匠の噺を聞いて、落語にはまってしまいました』と言いました。そうしたら志の輔師匠が『出会っちゃったんだね、落語に。僕は山崎邦正が武器の1つとして落語をやっているのかと思ってた。ごめん』って。『僕も出会っちゃったもん、落語に。一緒じゃないか』と。それを言われた時、あらためて素晴らしい人だと思いました」と笑顔を見せる。

 三度は漫才コンビのジャリズム、放送作家を経て、08年にピン芸人の世界のナベアツとして大ブレークした。「3の倍数と3の付く数字でアホになる」ネタで写真集も発売、テレビの売れっ子になった。「20代はコンビで活動して、20代後半で解散した。その時、ピン芸人になっても成長できないだろうなと思った。成長するためには、放送作家になってテレビを勉強するか、落語をやるかが浮かんだんです。その時は落語を全く知らないし、いまさら弟子修業はつらいなと思って放送作家を選んだんです」と振り返る。

 放送作家をしながら、世界のナベアツとしてテレビの世界で売れっ子になった。「ナベアツでブレークして、テレビに出られるようになったけど地に足がついていない。それで、前に思っていた落語家をやれば、もっと地に足がつくんじゃないかと。それでナベアツを捨てて落語家になった。単純にしんどかったんです。ぶっちゃけ、お金は損しましたけど、気持ちがいいですね」と話している。

 11年に桂三枝(現文枝)に入門して三度になった。「古典落語をやりたくて弟子入りしたんですけど、師匠からすぐに『自分でつくっていいぞ』って言っていただいて、つくり始めたんです。師匠が優しくアドバイスしてくれるから、新作も古典も頑張らなアカンので、なんとか二刀流でと思っています。まあ30年はかかると思いますが頑張ります」と話している。

 現在、2人は上方落語協会に所属している。東京での寄席出演はアウェーなのか。八方は「噺家というのは先人の恩恵を受けているので、感謝の気持ちが強い。関西からだと『来てくれて、ありがとな』という気持ちを感じるし、江戸の噺家が関西に来てくれた時も同じです」。

 ともにテレビの売れっ子から、落語の道を求めた2人。八方は三度を「彼の創作センスは一線を画している。僕も噺をつくるけど、うまくいかなくて苦しいだけ。古典を自分なりにつくり変えるのは楽しいんですけどね」。三度は「兄さんが落語家になって『大人の方正』を見て、お芝居はうまいし、しゃべりもかまない。先輩ですが、こりゃ10年後はすごいことになるぞと思いました」と話している。

 ほかに桂三若(48)桂三四郎(36)も出演する。