第61回ブルーリボン賞の各賞を20日、東京映画記者会(日刊スポーツなど在京スポーツ7紙の映画担当記者で構成)が発表した。

舘ひろし(68)は「終わった人」(中田秀夫監督)で主演男優賞を受賞。石原裕次郎さん、渡哲也も受賞したブルーリボン賞に名を刻んだ。授賞式は2月6日に、東京・霞が関のイイノホールで行われる。

定年を迎え人生を模索する男に、コミカルさと悲哀を込めた。これまでのイメージを覆し、身も心も変化していく主人公を演じ分けて評価された。舘は「賞をもらうのに慣れてないから照れくさいけど、ありがたいです」と笑った。

ブルーリボン賞では、裕次郎さんが58年に「勝利者」で新人賞を受賞したほか、64年に企画賞を受賞。渡は67年に「愛と死の記録」で新人賞を受賞し、77年に主演男優賞、97年に助演男優賞に輝いた。舘は「うれしいのと同時に、別の意味があるのかなと思っています」と、先輩2人に続いた感慨を深めた。

渡とのやりとりも明かした。昨年モントリオール世界映画祭最優秀男優賞受賞の時には渡から「ひろし、良かったな。俺たち大根だけど、お前は大根の花を咲かせたな」と祝福されたが、今回は「良かったな。もらえるものはもらっておけ」。心なごむ言葉を思い出し、舘は破顔した。

中田監督と細かく相談しながら演じ、ダブル主演の黒木瞳のぶれない存在感に助けられた。映画作りの楽しさを再認識し、多くの人への感謝を口にした。「あぶない刑事」シリーズで長年共演した柴田恭兵へは「軽くてテンポが良くてナチュラルな芝居に勝手に憧れました。恭さまとやっていなかったら、こういう芝居はできなかった」。昨年亡くなった、あぶデカシリーズや「終わった人」の黒沢満プロデューサーへの恩返しにもなった。

「これからも1つ1つの作品を大事にやってきたい。人生に終わりはない。最後まで挑戦です」と、作品のテーマに思いを重ねた。【小林千穂】