女性作家・いつか氏(53)が、単行本「続・成功する男はみな、非情である。」(光文社)と「新版 成功する男はみな、非情である。」(光文社知恵の森文庫)の2冊を出版した。常に変化するビジネス界で生き抜いていく、その術を聞いてみた。

06年に出版して、累計16万部のヒットとなったビジネス書「成功する男はみな、非情である。」の続編と改訂版。同書はビジネス界のトップに君臨する男たちの非情さと孤高を描いた。いつか氏は「それまでは恋愛本を描いていた私が、初めて書いたビジネス書でした。コピーライターとして、企業のトップのインタビューを手掛けることが多かったので、その共通項を書いたハードボイルドなビジネス書でした」と振り返る。

新たに書き下ろした「続-」では、米大統領ドナルド・トランプ(72)の富の象徴であるトランプタワーの写真を表紙に使った。「賛否両論あるけど、あえてトランプタワーにしました」。

13年前とは世の中が大きく変わった。08年のリーマン・ショックによる、いまだに続く世界的な不況。さらに、いつか氏は「当時と大きく違うのがスマートフォン。今ではビジネスマンの間では必携の武器となりました。ただ、本当のトップは持たないんですけどね。安倍晋三首相も、その筋の組長は持っていません。データをハッキングされたり、居場所を特定されたりとリスクが伴いますから。あとフランス人もスマホを嫌いみたいです。浮気が、ばれやすいですからね」と笑う。

仕事に対する、ビジネスマンの意識も大きく変わったと指摘する。「成功しなくても構わないというビジネスマンが増えました。ビジネスにおける縦横斜めの関係もなくなりつつあります。会社というもの自体が崩壊する中で、働き方が変わっていっている。苦しいことを受け入れて、2つの職場を掛け持ちせざるを得ないなど経済情勢の悪化が原因です。今の若い人は定年まで勤めるという発想がありません。それは、会社がそこまで保つという考えを持てなくなっているからです」。

AI(人工知能)の進出も功罪相なかばすると言う。「AIに働かせることによって、効率よく仕事をすることもできますが、そこで生まれる富は平等に分配されるわけではありません。AIに仕事を奪われて、収入がなくなるリスクもあるわけです。実際にアメリカでは、AIの進出をボイコットするためのデモも起きています。日本では、まだAIの導入がそれほど進んでないので、危機感を持っている人が少ないのが現状です」。

これからの社会は、AI、SNSの発達による「監視社会」になってしまう危険性を指摘している。「SNSを見て相手を疑ったり、成功をねたんだり、炎上させたりといった社会になる。恋愛も仕事も人生も、成功した後には“溶ける”。それはギャンブルだったり、ハニートラップに引っ掛かったり、ドラッグだったりします。幸せというものは分からない。この本を読むことが、新しい幸せを見つけることの手助けになればと思っています」と話している。

 

◆いつか 東京・目白生まれ。コピーライターとして活躍後、03年「別れたほうがイイ男 手放してはいけないイイ男」で作家デビュー。若い女性の深層心理をとらえた辛口エッセーからビジネスマンの成功と孤独を描いたベストセラー「成功する男はみな、非情である。」まで幅広く執筆。世界50カ国以上を訪問している。著書に「一流のサービスを受ける人になる方法」など。