俳優森山未来(34)が、美濃部孝蔵(若い頃の古今亭志ん生)役で出演するNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺」(日曜午後8時)について、同作で円熟期の同じ志ん生を演じるビートたけし(72)や役への思いを語った。

森山 とにかく本を読みました。落語の神様と言われている人で、皆さんの知っている志ん生は70代。でも戦前の志ん生は結構、知られていない。志ん生が自分について語っていても母親の名前もまちまちだったりするし、知っている人から推測をするしかなく、どうしようかと思いました。架空と史実の間のような感じ。たけしさんに寄せた方がいいのかなとか考えました。

孝蔵は松尾スズキが演じる橘家円喬に弟子入りする設定。

森山 不思議なんです。僕が年を取るとたけしさんになる。松尾スズキさんに弟子入りし、そこで落語を勉強した結果、たけしさんになる。光栄なんですが、謎の流れをどう考えていいのかさっぱり分からなくて。とにかく見てみようと、スタジオにたけしさんの撮影をのぞきに行ったんです。志ん生に似せているのかと思ったら髪の毛は金髪だし、思った以上にたけしさんはたけしさんでやっていた。それまでどうしようかなと思っていましたが、もういいかなと。

古今亭菊之丞の指導を受け、劇中で落語を披露している。

森山 落語は難しい。落語というより江戸前というか、話し言葉をどう考えればいいのかというのがあって。僕はメンタルが関西人なので、関西人の気質と関東の人の気質が違うというか。すぱんと歯切れのいい生き方をしている関西人をそんなに見ないし。人との関わり方とか違うので。その、すぱんという感じを出せる気がしない。ただ、江戸というけど、いろんな人間が集まっていると言われ、たけしさんがたけしさんでいるように、僕は僕なりのアプローチ方法を見つけた方が面白いのかなとも思う。気質は意識しますが、あまりとらわれ過ぎなくていいのかなとも思います。

宮藤官九郎氏の脚本は多くの出演者が「面白い」と言う。

森山 すごいですよね。昭和パート、大正パート、明治パートを行き来する感じが自然に入ってくる。本を読んでいるうちは混乱を全然せずに楽しく、すぐに読んでしまう。それを立体的にするスタッフが、本当に全部を考えようとすると、すごくややこしいとなって、ガアーッと来ちゃうんだろうなと思う。ただ、読んでいて気持ちのいい流れ方をして、楽しそうに書いている感じで無理がない。宮藤さんの気持ちが素直に流れ、楽しそうな感じが伝わってきます。

初の大河だが。

森山 うーん、長いです。だからやりたくなかったんです(笑い)。でもストレスになる現場ではないです。

たけしと同一人物を演じている。たけしを上回っていると思うことは。

森山 ないんじゃないでしょうか。競ってもいないし。すごいと思うことはいっぱいあります。高座を見てて、きっすいの芸人さんなんだなと。本当に芸を持った人。高座に上がることをちゃんと理解している。目の前に客がいる場面では事前に小話を用意しているようです。エキストラの表情を撮る時は頼まれていないのに小話をやる。それはすごいなと思う。

31日の第13回では初高座の場面が登場する、「主人公の金栗四三(中村勘九郎)と孝蔵が精神的にぐっと近づく瞬間の回。存在意義を1度感じていただける回になっていればいい」とPRした。