最近、NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺」(日曜午後8時)が「すごく面白い」という言葉をよく聞きます。当初、言われていた視聴率低迷の要因と考えられることも、6月30日開始の第2部から少なくなったと感じます。ただ、視聴率はなかなか回復しません。どうしたらいいのでしょうか。

当初、低迷の要因と言われていたのは、分かりにくさ。時代が何度も前後し、その中で2人のキャストが同一人物を演じていたりと、高齢者には理解しにくい描き方だったと思います。おまけに有名な武将に比べ、あまり知られていない人物が描かれ、五輪で負ける内容。見る側も暗い気分になったのかもしれません。

一方、第2部は、これまでと比べて比較的、分かりやすく、人見絹枝の五輪でのメダル獲得など、明るい話題に加え、視聴者の涙を誘うような感動的な描き方もあります。64年の東京五輪招致に尽力した新聞記者の田畑政治を演じる、阿部サダヲのパワフルで明るいキャラが視聴者を楽しませています。面白いと感じる視聴者は当然、増えていると思います。

ところが、視聴率はヒトケタのまま、なかなか浮上する気配がありません。いったん離れた視聴者が戻って来ないのです。最大の強敵は20%前後の視聴率を記録し、視聴者の年齢層が重なるテレビ朝日系「ポツンと一軒家」。最近の「いだてん」が面白くなっていることを知らず、大河離れした視聴者が「ポツンと-」に目を向けたままのようです。

「いだてん」の視聴率上昇のカギは、作品の面白さを、今、このタイミングで視聴者に知らせる努力をすることかと思います。「泣ける」「笑える」「スカッとする」「感動する」など心を揺さぶる作品であることを、少なくともPR番組などでうまく視聴者に伝えるべきだと思います。「あの場面はこういう意識で演じた」といった出演者のインタビューなどでは、見ていない視聴者に対する訴求力は弱い気がします。むしろ「いだてん」ファンの著名人を探し、視聴者に魅力を語ってもらう方が効果的かもしれません。

いずれにしろ「いだてん」の数字低迷は、作品から離れてしまった視聴者、見ていない人に向けた新たなPR手法を研究する、いい機会にもなった気がします。【中野由喜】