「この役は、誰にも渡したくなかった」。

東北放送(TBC)が22年ぶりに制作したドラマ「小さな神たちの祭り」の主役に、宮城県多賀城市出身の俳優、千葉雄大(30)が抜てきされた。東日本大震災で家族全員を失った主人公(千葉)が、8年経った今も葛藤を抱えながら生きる姿を描いた、内館牧子さん(70)脚本の2時間ドラマだ。

ドラマの発表会見は3日、仙台市内で行われた。震災に関する質問を受けた千葉は、慎重に言葉を選ぶよう、本音を吐露した。

「あの時ボクは東京にいたので(震災を)体験していない。だから、被災した人たちの気持ちが本当に分かるのか? 偉そうなことは言えないなと、今までずっと自分の思いにフタをしていた。それを今回、言葉ではなくお芝居で出すことができるから。この場所をいただいて光栄です」

ドラマの主人公も、あのとき東京にいた。対して、宮城の実家に住む家族全員が津波被害に遭う設定になっている。千葉は、8年前を振り返り。

「(震災の)直後は家族と連絡が取れず、連絡が取れたあとも、すぐ会いに行くこともできなかった‥‥そんな状況で自分は‥‥目の前のことを一生懸命やることしかできなかった。(震災に関して)いろいろな考えがあると思う‥‥このドラマでも震災への思いが皆それぞれ違っていて、どれを否定するのも違うと思う。(ドラマ上で)自分の家族など、大切なものをなくしてから気づくこともある。だから今、自分が置かれている当たり前の環境はすごく幸せなんだと、改めて感じました」

脚本を書いた内舘さんは「東京にいて感じるのは、どんどん震災が風化していってるなということ。私はここを隠さずに書きたかった」。つまり「風化させてはいけない」の思いが込められている。だからこそ千葉は、この役を誰にも渡したくなかった。

(震災から)8年‥‥年月は関係なく、いつまでも残るモノだと思う。ボク自身、忘れないようにしようと思わずとも、ずっと残っている。こんな思いを宮城県から発信して、全国の方にも知ってもらいたい、そのきっかけになれれば

放送は11月20日午後8時~TBCテレビにて放送。