女優八千草薫(やちぐさ・かおる、本名谷口瞳=たにぐち・ひとみ)さんが死去したことが28日、分かった。88歳。大阪府出身。24日午前7時45分、膵臓(すいぞう)がんにより、都内の病院で亡くなった。近親者による通夜と葬儀は済んだという。

所属事務所によれば、病状は急変した。「前日まで普通に食事をしていて『また明日』とあいさつをしてた」という。お別れの会は、生前の本人の意向で開かない予定。

昨年2月9日、所属事務所の公式サイトで18年1月、膵臓(すいぞう)がんの手術を受け、19年に入って肝臓にもがんが見つかり、闘病中であることを公表していた。

今年5月26日、千葉・森の墓苑で、理事を務める日本生態系協会が手がける「昆虫の家」除幕式に出席。休養宣言以来、初めて公の場に姿を見せていた。当日は気温30度を超える暑さだったが、元気な足取りで、「今日は本当に良いお天気ですけども。昨日より少し涼しいようにと祈っていましたけどダメでした」など約2分間のスピーチをこなしていた。

同イベントが最後のイベント出演となった。5月以降は検査のための入退院を繰り返しており、直近では今月2日に入院していた。

1947年(昭22)に宝塚歌劇団に入団。52年初演の「源氏物語」でかれんで純粋な若紫を演じて人気を博した。以降、清純派の娘役として宝塚の一時代を築き、当時の「お嫁さんにしたい有名人」首位もたびたび獲得していた。

51年に「宝塚夫人」で映画デビュー。ヒロインお通を演じた54年の「宮本武蔵」が米アカデミー賞で名誉賞(外国語映画賞)を受賞し海外にもその名をとどろかせた。55年公開の日伊合作映画「蝶々夫人」では主役の蝶々さん役を務めた。

宝塚を退団した57年に映画監督の谷口千吉氏と結婚。おしどり夫婦として知られ、谷口監督が亡くなる07年まで50年間を連れ添った。97年紫綬褒章を受章している。