女優水川あさみ(36)が今秋公開の映画「滑走路」(大庭功睦監督)で主演を務めることが24日、分かった。

同作は、32歳で命を絶った歌人萩原慎一郎さんの同名歌集を元に映画化。いじめや非正規雇用など自らの苦しい経験の中で、それでも生きる希望を歌った短歌をまとめた歌集は、同様の苦悩を抱える人々に支持され累計3万部超の大ヒットとなった。大庭監督、脚本家桑村さや香氏のタッグで、同作の世界観を元にオリジナルストーリーを制作。現代を生きる若者世代が抱える不安や葛藤、それでもなお希望を求めてもがき生きる姿を描いた。

水川は、将来への不安を抱える切り絵作家、翠を演じる。すでに撮影を終えた水川は「萩原さんの短歌は読む人の心にそっと寄り添いながらも包み込み、心に響くエールをくれるなと思いました」と振り返った。「それぞれの人生が交差し、行き交いながら葛藤し、決断しては立ち止まり、それでも前に進む姿は、誰しもの背中を押してくれる作品になったのではないかと思っています。原作同様に、見ていただいた人の心に寄り添う作品になっていればうれしいなと願っています」とアピールした。

大庭監督は脚本作り、撮影現場で「常に萩原さんの繊細な感受性、優しいまなざしを失わないことを意識した」という。その上で、原作者とその家族、原作歌集を愛する読者を失望させない。そんな思いで臨んだ。「結果的に、皆さまに映画を通じてしっかりとお返し出来るような作品になればと思っております」と語った。

若手実力派の浅香航大(27)、期待の若手寄川歌太(16)も出演する。

浅香は非正規雇用者の自殺問題に向き合いつつ、自らも過重労働にさいなまれる厚生労働省の若手官僚・鷹野を演じる。歌集を「多くの人が何かと生きづらさをどこかで覚えるこの時代に、ささやかな希望を見いだせる、止まり木のような作品だと思いました」。役については「官僚という仕事の想像を超える仕事量と情報量、責任感などに圧倒されましたが、鷹野の苦悩や葛藤を演じる上で重要なピースとなりました」。

寄川は、幼なじみをかばったことでいじめの標的にされてしまう中学2年生の学級委員長役を演じる。「僕自身葛藤もしました。全ての撮影を終え、役から自分自身に戻った瞬間、涙が止まりませんでした。たくさんの方に支えていただき、僕にとって大きな1歩となりました。ぜひ見て感じていただきたいです」と胸を張った。