フジテレビは、今月5日に亡くなった横田滋さん(享年87)の知られざる43年の戦いを描いたドキュメンタリードラマ「横田滋さん追悼特別番組『前略 めぐみちゃんへ』~“全身全霊”戦い続けた43年~」を13日午後1時30分から放送する。

滋さんは、北朝鮮に拉致された長女・めぐみさんとの再会を果たせないまま亡くなった。妻そして“戦友”として共に戦い続けた早紀江さんは、記者会見で「いつも穏やかで笑顔で、拉致されている人のことを思い、思い残すことがないほど、全身全霊で打ち込んだと思います」と振り返った。

カメラが入院直前まで追い続けた滋さんの映像と、昨年3月に放送したドキュメンタリードラマを再編集したものを通じ、横田滋さんの知られざる思いそして人生に迫る。

97年、拉致問題解決への署名活動を行う、若き横田夫妻。社会の関心はまだ薄く素通りされ続け、配っていたチラシを心ない人にたたき落とされる。しかしそれを再び拾い、声を上げ続けた。政府の対応が生ぬるいと首相官邸近くで体力の限界まで座り込みを続けたこともあった。02年に拉致被害者が帰国した際も、ニュースで何度も報じられた映像とは別に、横田夫妻がどのように家族らと接してきたのか、素材をあらゆる角度から見つめ、ふたりの行動をひもといていく。

ドキュメントドラマでは、滋さんを勝村政信(56)、早紀江さんを菊池桃子(52)が演じている。めぐみさんは、明るくひょうきんでいつも家族の中心的存在だった。温厚な滋さんとそんな夫を支える早紀江さんのイメージだが、実はめぐみさんが拉致被害者と知らされた直後、めぐみさんの顔と名前を明らかにしようと決めたのは滋さんだった。娘の身を案じて、伏せてほしいと訴える早紀江さんに「声を上げて戦おう」と説得した滋さん。夫婦の知られざる葛藤が明かされる。

早紀江さんは「(当時)早まって(めぐみさんの顔と名前を)出しちゃだめ、と意見が違っていたのですが『きちんと出して覚悟して進まなければだめだ』と言って、北朝鮮のことが世界中にわかってもらった。お父さんがやったことは間違っていなかったと思います」と話している。

フジテレビ報道局の山岸直人プロデューサーは「講演や集会、署名活動でご多忙な中、取材のためにお時間をいただき、何かのお願いをしても、いつも笑顔で丁寧に接してくれました。それが温和で優しい横田滋さんの姿でした。一方、長きにわたり拉致被害者救出のために共に活動を行ってきた人たちに滋さんの印象をたずねると、みな口をそろえて“信念が強い人”“勇敢な人”だったと語ります。そんな強い気持ちこそが、内外の世論を大きく動かし、拉致被害者家族の活動の原動力になったのです。優しくて強い滋さんが願い続けためぐみさん、そして拉致被害者全員の救出への強い思いをお伝えできればと思っています」と話している。