4人組バンド「クリープハイプ」の尾崎世界観(36)が「新潮」12月号で発表した「母影(おもかげ)」が、「第164回芥川龍之介賞」の候補作品に選出されていたが、20日に行われた選考会で、今回の受賞はならなかった。

「母影」は、母子家庭で育った小学校低学年の女の子が主人公の中編作品。尾崎はこのほど、日刊スポーツなどの取材に応じた際に、少女視点に設定したことについて「ある時期、バンドのライブ前に整体院に通っていて。その横のベッドで小さい女の子が勉強しているのを見て、そこはいかがわしいお店ではないのですが、自分が悪いことをしているような気がした。そこで『あやしいマッサージのお店で留守番をしていたら…』という設定を思い付きました」と明かしていた。

尾崎はこれまで発表してきた作品でも内に秘めた「怒り」を描いてきた。「もともと昔から、創作の根源には怒りがあって、今も純度100%であります。それを作品で表現してきて、届くものとそうでないものが分かってもきていました。ただ怒りって、ホースで例えると、先をつぶした時の感じで、ピンポイントでは届いても、思ったところには届かなかったりするなと。今回はもっと狙いを定めて、明確に届けたいと思って、書こうと思いました」。

小説を書き始めた時には、15年に芥川賞を受賞したピース又吉直樹になぞらえ「第二の又吉」と言われることもあった。尾崎は「その時に又吉さんがテレビでフックアップしてくれたのがうれしかった。又吉さんが自分視点で書き続けているからこそ、自分はそうではない部分をというのは早い段階から思っていました」とも明かしていた。今後の執筆活動に意欲を見せており、尾崎の次回作にも期待がかかる。【大友陽平】