俳優伊東四朗(83)が14日、舞台「みんながらくた」(作・田村孝裕、演出・ラサール石井)の千秋楽を迎え、15日間の座長公演を完走した。

「伊東四朗生誕?!80+3周年記念」と銘打った作品でリサイクルショップを舞台にした人情劇。東京・下北沢の本多劇場で開催されたコロナ禍の公演は収容人数も全席の5割に絞って行われた。

伊東は「1人1人が主役と言ってもいい芝居」と共演した戸田恵子(63)ラサール石井(65)堺小春(27)ほか全出演者、スタッフをねぎらった。コロナ禍で足を運んでくれた観客にも感謝した上で「何となく不自然でした。(お客さんが会場の)半分と言うけれど、ステージからは4分の1に見えるんです」とフルオープンの開催に至らず少し寂しそうに話した。

15日間の日程で行われた舞台は、出演者のチームワークが日増しに強固となり、演技・演出ともにバーションアップを繰り返した。終盤のカーテンコールでは、戸田が涙を流すシーンもみられた。公演日程がゴールに近づくに連れて共演者、スタッフが寂しさを感じるほど結束力が高まっていた。

6月15日に84歳となる伊東のタフさも顕著だった。舞台では機敏な動きを見せ、軽妙な語り口で客席をクスクスと笑わせた。普段から夫人を連れ立って6キロの距離を1時間20分かけて歩くなど足腰の鍛錬に余念がない。自宅にはダンベルなどトレーニング器具を置き、時間を見つけては腕立て伏せ、腹筋で体力の維持に努めている。

2月26日から始まった座長公演の開催中は、毎週土曜に文化放送「親父熱愛(オヤジパッション)」(午後3~同5時)への出演も掛け持ちした。約2時間の舞台出演後、間髪入れずに劇場からオンラインでラジオの生放送に突入。スタッフ関係者の心配をよそにひょうひょうと仕事をこなした。

周囲から「喜劇王」と言われるが「私は喜劇生。まだまだ喜劇を学び続ける」。今、伊東が切に願っていることがある。「やっぱりお客さんには大きな声で笑ってもらいたいなあ」。コロナ禍が収束し、満席の観客が遠慮なく大声で笑える本来の劇場の姿が戻ってほしい。

◆伊東四朗(いとう・しろう)1937年(昭12)6月15日、東京都生まれ。58年に石井均一座に参加。62年に軽演劇仲間の三波伸介、戸塚睦夫と「てんぷくトリオ」を結成。その後、ベンジャミン伊東として「電線音頭」「ニン」などのギャグも流行。「伊東家の食卓」やドラマ「おしん」「笑ゥせぇるすまん」「平清盛」「おかしな刑事」、映画「マルサの女」など人気作品に続々出演。現在も生放送で出演する文化放送「伊東四朗 吉田照美 親父・熱愛(パッション)」は今年25年目。聴取率も長らく単独首位を堅持する。