新型コロナウイルス対策への不満から米カリフォルニア州で、民主党のニューサム知事の解職を求めるリコールに向けた署名活動が激化する中、元五輪金メダリストでトランスジェンダーのタレント、ケイトリン・ジェンナー(71)が出馬に名乗りを上げた。

26日までにリコールに必要数とされる直近の知事選で投票した有権者数の12%にあたる149万5709件を超える162万6000件の有効な署名が確認され、今年後半にリコール投票が行われることが濃厚となっている。

リコールが成立すれば、俳優アーノルド・シュワルツェネッガーが出馬して勝利した2003年のリコール選以来となる。

タレントのキム・カーダシアンの義理父として知られるジェンナーは、1972年ミュンヘン五輪で十種競技の米代表となり、4年後のモントリオール五輪で金メダルを獲得。引退後は80年に映画「ミュージック・ミュージック」で俳優デビューし、人気リアリティー番組「カーダシアン家のお騒がせセレブライフ」にも娘でモデルのケンダルとカイリー・ジェンナー姉妹らとともに出演している。

15年にはトランスジェンダーであることをカミングアウトし、ブルース・ジェンナーから名前を改名した。

ニューサム知事の厳しいコロナ対策は共和党支持者を中心に批判を浴びており、03年のリコール選で民主党のデービス氏に代わって共和党のシュワルツェネッガーが就任した過去の再現となる可能性も指摘されているが、同州は民主党の地盤であることから長年の共和党支持者であるジェンナーも現時点でどの政党から出馬するのかは明言していない。

キムらカーダシアン家族は民主党支持者として知られることから、共和党から出馬した場合は家族の支援は得られない可能性があり、本人も政治観の違いからサポートは期待していないと伝えられている。23日に出馬を正式に表明したジェンナーは、すでにトランプ前大統領の選挙キャンペーンでマネジャーを務めたブラッド・パースカル氏に協力を依頼したと伝えられている。

共和党穏健派としてカリフォルニア州知事になったシュワルツェネッガーは、ABCテレビのトーク番組でジェンナーについて問われ、「カリフォルニアに住んでいる多くの人が現状に不満を抱いているので、誰にでも勝つチャンスはある。できるだけたくさんの候補が名乗りを上げることに期待している。ケイトリンであれ誰であれ、どこに向かいたいのか明確なビジョンを持つことが必要」と語った。(ロサンゼルス=千歳香奈子)