尾野真千子(39)が20日、川崎市内のTOHOシネマズ川崎で行われた4年ぶりの主演映画「茜色に焼かれる」(石井裕也監督、21日公開)公開前夜最速上映会で感極まって涙した。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた3度目の緊急事態宣言が発出され、東京都や大阪府では映画館が休業している。4月27日に都内で行った完成報告会も、当初は観客を入れる予定だったが、無観客での配信を余儀なくされた。その中、緊急事態宣言下にない川崎市で、客席を50%にした状態で初めて観客を入れた上映会が行われたことに、尾野は登壇した土岐から涙目だった。「本当に、こんなに公開がうれしいと思えるのは何年ぶりだろうと思えるくらい、感動しております」と感慨深げに語った。

トーク中、笑みを浮かべることもあったが、目からは次第に涙があふれ出そうになっていた。そして石井監督が「ニュースを見れば、それ本当かよ? ということが横行している。映画、芝居というのは、ウソなんですけど人生とか命を懸けてつくウソは、ものすごく尊くて…だから映画は価値があると、去年から今年にかけて痛感しました」などと語るのを聞いているうちに、尾野の涙腺は決壊した。

「コロナ関係なく言います…劇場で見て欲しいんです。怒られるかも知れないけれど、皆さんに手に手を取り合って見に来て欲しいんです。それくらい、みんなで命を懸けて撮った作品です。こんな状況で、やりにくい世の中で、私たちのこの仕事、出来ないかも知れないって恐怖が襲ってきて…でも、今、みんなとこういう作品を伝えなければいけないと、それが私たちの使命だと思って、スタッフも、出演者も監督も、お金集めてくれた人も、場所を貸してくれた人も、みんな命懸けでやりました。こんな最高の作品はありません」

「茜色に焼かれる」は、田中良子(尾野)が、7年前に理不尽な交通事故で夫陽一(オダギリ)を亡くしながら、ひとりで中学生の息子純平(和田)を育て、夫(オダギリ)への賠償金は受け取らず、施設に入院している義父の面倒もみている中、コロナ禍で経営していたカフェが破綻。花屋のバイトと夜の仕事の掛け持ちでも家計は苦しく、そのせいで息子はいじめに遭うが、社会的弱者として世の中のゆがみに翻弄(ほんろう)されながらも信念を貫き、たくましく生きる物語。

尾野は「ぜひ、ぜひ、ぜひ、劇場で見ていただきたい…そういう気持ちで作りました…すみません、泣いて。皆さんが笑って、この劇場に来て下されるよう、ずっと祈ってます。コロナに負けるな…頑張る。頑張ろうね」と観客に切々と訴え、劇場を後にした。