先日、歌手石川ひとみ(61)をインタビューした。多くの人はヒット曲「まちぶせ」と重ね合わせ、80年以降のアイドル全盛時代の歌手、といった記憶なのだと思う。

取材のきっかけは、デビュー43年目にして初めて出したライブDVD「わたしの毎日」がオリコン週間ミュージックランキングで7位に入ったから。43年間で初のDVDというのも珍しいが、何よりベスト10入りしたというのが個人的にはニュースだと思ったからだ。ただ、それよりも、プロモーターから送ってもらったDVDに軽い衝撃を受けたことが取材を後押しした。

個人的には、石川のことを、歌のうまいアイドル歌手ぐらいの認識だった。その当時は、テレビの歌番組が多く、さまざまなアイドル歌手が出演。いわゆる口パクが許される土壌はあまりなく、だからこそ、あまり歌のうまくない歌手の歌声も流れていた。

そんな状況の中では、石川は歌のうまい歌手の部類に属する程度の認識だったように思う。

そんな石川も還暦を超え、DVDを見る前は、恐縮ではあるがそれほどの期待感はなかった。しいていえば「まちぶせ」さえ聞ければいいかな、とも思っていた。

ところが…。1曲目の「ひとりじめ」を聞くと同時に認識が変わった。どのように表現すればいいのかが難しいが、しいていえば、ビズリーチのCMのような感じとでも言えば、わかってもらえるだろうか。それほどの期待が大きくなかっただけに、衝撃も大きかった。同曲はNSPの天野滋が手掛けた名曲でもある。石川の歌声は往年と変わらないというより、その声量や高音の伸びなどは、全盛時以上の印象も受けた。

さらに、石川といえば、襲われた病気との闘いも有名だ。87年にB型肝炎が発症し入院する。治療を終えて退院はしたものの、所属していた大手芸能事務所が契約更新することはなかった。今でこそ病気への理解は進んだが、その当時は、いわれのない、無理解な臆測も飛んだ。インタビューでも、当時のつらかった心境を吐露していた。

だからこそ、そんな困難にも負けず、歌手活動を続けてきたことに敬意も表したい。そして、ステージ上の石川の表情が、とにかく明るく、楽しげであることを付け加えておきたい。