俳優の「役作り」についての話を聞くのは面白い。やり方は人それぞれで、正解もないからである。そんな「役作り」にテクノロジーの進化が影響を与えていると感じることがあった。

まずは映画「聖地X」(11月19日公開)の大ヒット祈願イベントでのこと。主演の岡田将生(32)が験担ぎについて聞かれた時にこう語った。「ちょっと意味合いは変わってしまうんですけど、僕は撮影に入ったらその作品の台本を撮って、クランクインした日からクランクアップする日まで絶対に(携帯電話の)待ち受けにしています」。

今は多くの人がスマートフォンを持ち歩くようになり、かつての“ガラケー”などとは違い、待ち受け画面もより大きく、鮮明に見ることができる。機種によっては待ち受け画面に「ToDoリスト」などを表示させている人もいる。岡田が語ったのは、その“台本版”の使い方、といったところだろうか。理由については「携帯はよく見るので、ずっと集中できるように始めました」と話していた。

携帯電話の待ち受け画面を出演作仕様に変えている役者は意外と多いのかもしれない。女優の石原さとみ(34)も映画「そして、バトンは渡された」(10月29日公開)のオフィシャルインタビューで、役作りのために待ち受け画面を作中で共演時間の長かった子役、稲垣来泉(10)との2ショット写真にしていたと明かしていた。

その後、主演の永野芽郁(22)との撮影日が近づくと写真を永野のものへと替えていたといい「会えない時間で自分の愛情を強くしていって、やっと会えたなと思って。撮影は1日だけでしたけど、その時間がずっと長く感じるくらい尊い時間でしたね」と語っていた。

時間は短くても何度も目にしたり、接触することで好感度や印象等が高まっていく。これは心理学的には「ザイオンス効果(単純接触効果)」と呼ばれており、企業の営業や広告などでも利用されている。俳優たちも少しでも役に入り込もうと工夫しているのだ。これは誰でも応用することができる。「待ち受け画面」を変えれば、何か習慣も変わるかもしれない。【松尾幸之介】