秋元康氏が総合プロデュースする劇団4ドル50セントの前田悠雅(23)がこのほど日刊スポーツの取材に応じ、ヒロイン役を務める舞台「悪魔と永遠」(2月5日初日、東京・本多劇場)への意気込みを語った。オーディションを経てヒロイン、マリア役を勝ち取った。

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-本多劇場に立つのは初めてです

前田 何度もお芝居を見に行っていた劇場で。自分がその場所に、しかも今年立てるなんて思っていなかったので。演劇の聖地って言われている場所でもあるし、本多劇場で見てきた作品にも思い入れがあります。

-オーディションで勝ち取ったヒロイン役です

前田 すごく緊張しました。でも、絶対に勝ち取りたいと思いました。オーディションの時点で台本が大まかに決まっていて、何シーンかやらせていただいたんですけど、すごく面白くて、見た時点で「もう絶対にやりたい!」と思いました。オーディションの次の日の朝、用事があって駅に向かっていた最中に、マネジャーさんから「決定しました」と連絡をいただいて。足が止まって、その場からちょっと動けなかったです。うれしさと緊張が一気に押し寄せてきて。すぐに母に「本多に立つことになった」と電話をしました。

-前田さん演じるマリアは、主演の東出昌大さん演じる主人公とクラブで出会い、2人で心中自殺を試みるも、1人だけ死んでしまうという役どころです

前田 そもそも幽霊の役ってどうやるんだろうという好奇心がありました。みんなが夢を持ったりとか、夢をかなえていく姿を、死んでいるマリアが見てどう感じているのか、体現できたらいいなと思います。マリアの姿を通して、生きることとか、人と関わることってどういうことなのかなっていうのを伝えるのが私の役目なのかなと思っています。

-幽霊という難役ですが、どのように役作りを

前田 死ぬってどういうことなのかな、って最初考えていたんですけど、やっぱり結局誰も死の世界ってわからないんですよね。とにかく正解がない。演出の川名幸宏さんからは「正解もないし、とにかくもうなんでもやってみて。多分やったことが正解になる気もするし」という言葉もいただきました。自由っていうのが逆に難しいと思うこともあるんですけど、とにかく今は全部やってみるというスタンスですね。

-初共演の東出さんの印象は

前田 初めてお会いした時はとても身長が高くてすごく緊張感があったんですけど、すごく気さくな方で、稽古場でもとっても話しかけてくださいます。稽古場でみんなをおおらかに包み込んでくださるたたずまいがあります。稽古場にも毎日、1番とか2番目とか、早い段階でいらっしゃっていますね。とても居心地良くやらせていただいています。

-東出さんだけではなく、ベテランの方々がキャストにそろっています

前田 皆さんと一緒にいい作品にするために自分も挑戦し続ける気持ちではいるんですけれど、追いつかないことが多いです。本当に尊敬できる方々と一緒にやらせてもらえてることがすごく貴重だと思っています。私は結構自分の中で悩んでしまうことが多いんですけど、皆さんそれにすぐ気づいてくださって、言葉だけじゃなくて、お芝居を通してやりやすい環境を作ってくださいます。自分もいつかそういう先輩になりたいなと思っています。「作品を作る上で年功序列とか、上下関係みたいなものはないから」と言っていただけて、すごくやりやすくなりました。

-劇団4ドル50セントは昨年12月26日に2期生7人が新加入しました

前田 先月26日のイベントの時の緊張感と、1期生みんなが率先して動こうとして活気があふれていたのは、うれしかったですね。やっぱり、ここからまたスタートできるんだ、っていう喜びがありました。2期生の子たちがどうして入りたいと思ってくれたんだろう、と思う気持ちもあって、とにかく入って来てくれてありがとうっていう気持ちと、残念な思いを絶対にさせたくない、っていう思いは、1期生みんなが思っていることだと思います。

-3月17日から劇団4ドル50セントにとって2年半ぶりの新公演が上演されます

前田 今の「悪魔と永遠」は、場数も踏まれて、技術も知識も豊富な先輩方とやらせていただいているけど、4ドルでは自分が先輩側になるので。もちろん、先輩後輩関係なく作品は作っていきたいと思うんですけど、「悪魔と永遠」で培ったものをどういうふうに劇団に持っていけるのかな、って結構考えてますね。それは自分次第だとも思っているので、ある種チャレンジだなと思います。2期生がどういうお芝居をするのかまだよく知らないので、単純に楽しみです。

-2年半前の前回公演から、前田さんも劇団外部の作品で場数を踏んでいます

前田 真面目と人見知りゆえに、周りとのコミュニケーションをとるのが結構苦手だったんです。同年代の方は割とすぐうち解けられるんですけど、年上の方となると難しくて。でも昨年舞台「ヒミズ」に出させていただいて、人との関わりがいかに大事か学ばせていただいてから、お芝居のやり方とか、作り方が少し変わって、やりやすくなってきました。前は真面目な自分がちょっと嫌いだったんですけど、今は割と振り切れるようになってきたかもしれません。真面目さをうまく使いこなせるようになってきたのかもしれないです。

-あらためて、2022年の抱負は

前田 お芝居をたくさんしたいです。まだ映画に名前のある役で出演させていただいたことがないので、映画に出演したいっていうのは1つの目標ですね。あと、仕事だけじゃなくてプライベートも充実させたいです。いろんな所に行きたいですし、アウトドアもやりたいです。うちの男性劇団員も結構アウトドアやっているメンバーがいるので、教えてもらいたいですね。

-劇団4ドル50セントはさらに新劇団員も募集しています

前田 劇団にとって目まぐるしい1年になるのかな、って思います。それがすごく楽しみな半面、やっぱり責任感みたいなものを感じています。卒業していった劇団員が先陣を切ってやってきたことを思い返す瞬間があって、まだ自分にもいろいろとできることがあると思っています。次は自分が先陣を切って、みんなを引っ張っていくぐらいの気持ちで盛り上げていきたいです!

【聞き手・横山慧】