テレビ朝日は10日、亀山慶二代表取締役社長からの辞任の申し出を取締役会で受理し、同日付で辞任したことを発表した。昨年スポーツ局社員・スタッフによる不祥事が連続したため監査・検証を行った際に、亀山氏が統括するスポーツ局と意思疎通を欠いていたことや、亀山氏による会社経費の私的使用が発覚したことを理由としている。

発表によると、21年8月以降、スポーツ局の社員・スタッフによる不祥事が連続して発覚したことを受け再発防止策を策定するため「役職員の業務監査・検証委員会」を設置し、スポーツ局のガバナンスを中心に監査・検証。その過程で、スポーツ局統括でもある亀山氏の業務執行上の不適切な行為が明らかになったとしている。

理由の1点目として「スポーツ局長との意思疎通の欠如」をあげた。「亀山氏は、当社社長に就任した2019年6月以降、スポーツ局内において報告会を主催し、ほぼ毎週スポーツ局内の主要な役職者を招集して協議していました。報告会は、会社として正式に設置した機関ではありませんが、スポーツ局内の意思疎通・情報共有・円滑な指揮命令の伝達にとって、重要な役割を果たすことが期待されておりました。しかしながら亀山氏は、合理的な理由もなくスポーツ局長をこの報告会に参加させないだけでなく、スポーツ局長との日常的な意思疎通も十分に行っていなかったため、スポーツ局内の指揮命令系統の混乱を招き、職場環境を悪化させる事態となっていました」と説明した。

もう1点として、亀山氏に「不適正な伝票処理による会社経費の私的使用」があったとも公表した。「亀山氏は、当社社長就任後、スポーツイベントへの出席・営業活動のため、会社の費用負担で国内各地に出張していました。しかしながら、その中には業務との関連が認められないにもかかわらず、その際の会食・ゴルフ等の費用を含め、あたかも業務上の関連があるかのように仮装し、会社の費用として経費の精算をしていた事例があったことが確認されました」としている。

さらに、「不適切な伝票処理以外にも、亀山氏には、代表取締役社長として不適切であって、業務の遂行に支障をきたすおそれのある行為が確認され、取締役の善管注意義務に照らして問題視せざるを得ないものがありました」と追記している。

また亀山氏のコメントも掲載。「代表取締役社長としての業務執行において、業務監査・検証委員会から不適切な行動が指摘されました。すでに昨年暮れ、その責任を痛感し辞任の意向を申し出ておりましたが、このたびそれが取締役会で認められ、すべての役職を辞任いたします。職責を全うできず、テレビ朝日の役職員の皆様やステークホルダーの皆様に大変なご迷惑をおかけしたことを、衷心よりお詫び申し上げます。」と記された。

今後は早河洋会長が社長を兼務する。亀山氏は親会社であるテレビ朝日ホールディングスの取締役も辞任する。

同局では、東京オリンピック(五輪)の番組スタッフ10人が閉会式があった昨年8月8日夜から9日未明にかけて、緊急事態宣言下にあった都内で飲酒を伴う宴会を開き、女性社員1人がカラオケ店の2階から転落して足を骨折する重傷を負った。同局は翌9月、搬送された女性社員を含むスポーツ局社員6人全員を10日間の謹慎処分にしたと発表した。他の4人は社外スタッフだった。

また同10月には、リオデジャネイロオリンピック(五輪)卓球銀メダルの吉村真晴が、同局スポーツバラエティー番組の収録中に肋骨(ろっこつ)を骨折。レスリングの技を掛けられるよう、うつぶせになった体を反転させられた際に肋骨を骨折したという。

また一部では他にも、スポーツ局社員がかかわったとされる不祥事が報じられていた。