世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス)で最高賞パルムドールを争うコンペティション部門に出品された、是枝裕和監督(59)が手掛けた初の韓国映画「ベイビー・ブローカー」(6月24日)の会見が27日、行われた。同監督は同作と、13年に審査員賞を受賞した「そして父になる」、初のパルムドールを受賞した18年「万引き家族」と「ベイビー・ブローカー」が「直線で繋がっている」と語った。

「ベイビー・ブローカー」は、子供を育てられない人が匿名で赤ちゃんを置いていくことができるように用意された“ベビーボックス”を巡り、そこで出会っていく人たちの話を描いた物語。是枝監督は、新生児の取り違え事件を描き、13年に審査員賞を受賞した「そして父になる」の公開当時のインタビューで「女性は子どもを産むと、みんなは母親になれるけれど、男は、なかなか実感を持てなくて、父親には何か階段を上らなければならない、実感を持てない」と実感を語ったと振り返った。その上で、その発言に対し、友人から「女性も生んだら、すぐ母になるわけではない。母性が生まれながらに備わっているというのは、男性から見た女性の偏見である」と指摘されたと明かした。その上で「言われたことに、とても僕は反省しました」と振り返った。

その反省から、家族ぐるみで万引して生計を立てる血縁のない家族を描いた「万引き家族」で安藤サクラが演じた「子どもを生まないんだけど母親になろうとする女性」と、「ベイビー・ブローカー」でイ・ジウン(29)が演じた「生んだんだけれど、いろいろな事情で母になることを諦め」ベビーボックスに赤ん坊を預けた女性像が生まれたと説明。「2人は姉妹として描いている。『そして父になる』から『万引き家族』『ベイビー・ブローカー』は直線的に繋がっております」と語った。

「ベイビー・ブローカー」は、是枝監督が脚本も手掛けた。脚本の後半3分の1は、決定稿を出さずに撮影を始め、撮影中に書いた残りの脚本を主演のソン・ガンホ(55)カン・ドンウォン(41)ぺ・ドゥナ(42)イ・ジュヨン(30)らと話し合い、ブラッシュアップしてラストまで書き上げた。

◆「ベイビー・ブローカー」 クリーニング店を営むサンヒョン(ソン・ガンホ)と、赤ちゃんポストがある施設で働くドンス(カン・ドンウォン)の裏稼業はベイビー・ブローカーで土砂降りの晩、ソヨン(イ・ジウン)がポストに預けた赤ん坊を連れ去る。翌日、思い直したソヨンが赤ん坊不在に気づき警察に通報しようとすると「大切に育ててくれる家族を見つけようとした」と白状。あきれたソヨンだが成り行きで2人と養父母探しの旅に出る。尾行する刑事スジン(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)も追う。

◆是枝裕和(これえだ・ひろかず)1962年(昭37)6月6日、東京都生まれ。87年に早大第一文学部文芸学科卒業後、テレビマンユニオンに参加しドキュメンタリー番組の演出を中心に活動。95年、初監督作「幻の光」がベネチア映画祭金のオゼッラ賞を受賞。カンヌ映画祭出品は、01年「DISTANCE」のコンペ部門が初。04年は「誰も知らない」で柳楽優弥が史上最年少14歳で男優賞受賞。15年には「海街diary」をコンペ部門、「海よりもまだ深く」をある視点部門に出品。14年に制作者集団「分福」立ち上げ。