今年1月に脳梗塞を発症し5月に退院、現在もリハビリ治療を続けている落語家三遊亭円楽(72)が11日に東京・国立演芸場の8月中席公演で復帰した。高座に上がるのは約6カ月半ぶり。

円楽はトップバッターで登場。緞帳(どんちょう)が上がると板付きで座っており、観客の大きな拍手に何度も手ぬぐいで涙をぬぐった。

「ありがとうございます。とにかくここまで上がってきまして。感極まって怪しくなるかもしれませんが。歩いて出てきて、歩いて帰れるようになるまで頑張ります」とあいさつした。

さらに「やめちまおうと思った。代わりはいくらでもいる。でも、スタッフにみっともなくてもいいからやりましょうと言われた。みっともなくてもいい。死ぬまでやります」と宣言した。

これまでも肺がん、脳腫瘍と大病を乗り越えてきた。円楽は「ICUから3度目の帰還です。なんでこんなことになったんだ。みんな歌丸が悪い」と、日本テレビ系「笑点」で長く共演、親交の深かった故桂歌丸さんへの愛ある毒舌も。国立演芸場8月中席は、歌丸さんが長年トリを務め、19年に円楽がトリを引き継いだだけに、感慨は深い。

入院中の出来事を語ったり、医師、看護師への感謝を語るとまた涙をぬぐう場面もあり「みんなの優しさに支えられ、みんなが助けてくれた。だから頑張らないといけない」。

短くて落語らしい演目として復帰1席目に決めていたという「猫の皿」を口演し終えると、大きな拍手を受け、緞帳(どんちょう)が下りる時もまた目頭をぬぐっていた。15分の予定時間だったが、30分近く話しきった。

出番を終えロビーで取材に応じ、「『落語は急にはうまくならない。すぐに下手になる』と教えられたけど、なるほどね」と辛口の自己批評をしたが、「中入り前に出ようと思ったけど、(トップバッターで)緞帳が開いて俺がいたら映像でも使いやすい。編集のことも考えてるんだ」と話すなど、サービス精神も見せた。

現在の体調については「まあまあ」とし、「高次脳機能障害で短期の記憶は…。でも昔覚えた落語は忘れてない」と話した。発作で倒れた際に左肩をぶつけ脱臼し、まひも残るため左腕は動かせないが、近所を散歩しながらリハビリを続けているという。

今後は「演芸プロデューサーでも、落語コーディネーターでもいい。落語に関わる仕事であればやる。車いすを押してもらって、あちこちに落語を聞きに行こうと思う」と、自分が高座に上がる以外にも意欲も見せた。

空いている円生の名跡についても「ボロボロになって、みんなが継いでいいよと言ったら出したい。円生の名前が忘れられてしまう。この人は、って人が出てくるまでのつなぎでいい」と話した。

落語界がさらに興隆し注目されるために何が必要かと問われ、円楽は「統一きょうかい!」と即答。報道陣が驚くと「いや、俺が言うのは、協会を統一する、ということ。東京落語会を作って総合マネジメントをやった方がいい」と提案、円楽節も見せた。

14日、20日千秋楽の出演予定に加え、15日の出演が決まった。