俳優の寛一郎(26)と佐藤浩市(62)父子が5日、都内のテアトル新宿で行われた映画「せかいのおきく」(阪本順治監督、4月28日公開)完成披露試写会にツーショットで登壇した。父子そろってのイベントへの登場は、寛一郎が俳優にデビューした2017年(平29)以来、初めて。

寛一郎は今作で、各家庭のかわや(トイレ)からくみ取った下肥を買い、必要なところに売って生計を立てる、池松壮亮(32)演じる下肥買いの矢亮と出会い、紙くず拾いから転職した中次を演じた。一方、佐藤は主演の黒木華(33)が演じた武家の娘おきくの父・源兵衛を演じた。寛一郎は緊張の面持ちで「3年前に撮ったのが、ラストシーン。劇場で公開されて、うれしいです」とあいさつした。佐藤は、寛一郎の左隣に立ち「こんばんは。今日はありがとうございます」とあいさつした。ただ、左隣の阪本順治監督(65)に向かって「並びが嫌で…替わってもらえますか? 舞台なので恥ずかしい」と照れ笑いを浮かべた。同監督から「これから、佐藤君が面白い話をします」と振られると「何で、俺に振るんだよ!」と言い返した。

佐藤と寛一郎は、今作が30作目となる阪本監督の20年の映画「一度も撃ってません」で、佐藤が作家の編集者、寛一郎が後任の編集者役で初共演。ただ同作は、新型コロナウイルスの感染拡大の渦中の公開となり、同3月に開いた無観客の記者会見には、佐藤は参加も寛一郎は不参加。同7月の公開記念イベントも、佐藤がリモートで参加したが、寛一郎は不参加だった。

2人は、22年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、大河ドラマ初出演の寛一郎が源頼家(金子大地)の息子公暁役、18年ぶりの大河出演となった佐藤は上総広常役で出演している。

寛一郎は、佐藤の方には、あまり視線を向けなかった。作品について話を振られた中で、父のことを「佐藤浩市さん」と呼ぶなど、俳優同士として登壇することに努めていた様子だった。そんな寛一郎が、下肥について「発酵させたもので、臭いがあるんですよ」と語るのを聞きながら、佐藤は笑みを浮かべた。

劇中には、佐藤演じる源兵衛が、かわやで大便をしているところを、下肥買いとして待つ中次が会話するシーンがある。佐藤は「かたや、かわやで息みながら、かたや待っている男…とっても面白くて(尻を)前から拭くか後ろから拭くまでの始末まで、非常に面白かった」と笑いながら語った。

トークの中で、残したいものと聞かれると、寛一郎は「DNA」と書かれたフリップを掲げ「横に父がいるのに、何ですけど」と、この日の檀上で初めて佐藤を父と呼んだ。その上で「この、いまいましい、ふざけた佐藤家のDNAをですね、100年後も残していって欲しいなということで、僕も頑張りたいと思う」と、祖父の三国連太郎さんからの俳優一家の継承を口にした。佐藤は「コラっ!!」と口にしつつ、笑った。