劇団ヨーロッパ企画の新作映画「リバー、流れないでよ」(山口淳太監督)初日舞台あいさつが23日、東京・TOHOシネマズ日比谷で行われた。俳優陣は、2分間のループから抜け出せなくなってしまった人々の混乱を描く群像劇を演じるにあたり、2分に縛られた芝居の難しさを口々に語った。

「リバー、流れないでよ」は、京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」が舞台。仲居のミコトは、貴船川のほとりにたたずんでいたところを女将(おかみ)に呼ばれ、仕事へと戻るが2分後、なぜか再び貴船川を前にしていた。番頭や仲居、料理人、宿泊客も、ずっと熱くならない熱かん、なくならない締めの雑炊、永遠に出られない風呂場など、2分たつと時間が巻き戻り、元にいた場所に戻ってしまいながら、それぞれの“記憶”だけは引き継がれ、連続する「ループ」に陥っていた。そこから抜け出したい人、とどまりたい人…。乱れ始める、それぞれの感情に合わせるように、雪が降ったりやんだり、貴船の世界線が少しずつバグを起こす。力を合わせて原因究明に臨む皆を見つつ、ミコトは1人、複雑な思いを抱えるという“時の牢獄(ろうごく)”を描くタイムループコメディーだ。

2分間のループを演じるため、芝居も2分間で行うことを要求された。作家のオバタを演じた近藤芳正(61)は「最初、2分間って、どれくらいセリフをゆっくりしゃべればいいのか、早くしゃべればいいのか感覚が分からなかったんですけど、何テイクか重ねていく上で、2分ってこんな感じだったんだ、と体感的に分かってきて。みんなが、ゆっくりの時、ちょっと早めにしゃべろうとか、体感で覚えていくところなかったですか?」と周囲に問いかけた。編集者杉山役の中川晴樹(45)は「相談しながら台本を直したりとかも、ありましたよね」と、うなずいた。

撮影現場では、2分間をカウントし、表示するものが見える中で演じていたわけではなかった。山口淳太監督は「普通に『ごめんなさい、10秒オーバーしたんでNGです』とか『5秒ショートしたんで、もう1回、お願いします』とか、そんなのを延々とやっているんです」と振り返った。

中川は「そういうものなんですよ。芝居が良かったとか、どうかじゃないんですよね。良い芝居が出来た! と思っても(2分を)超えていたらダメだから。判断してるのは監督じゃなくて時計!」と訴えた。ミコトを演じた藤谷理子(27)も「ショートでも、3秒足りない、とかでも撮り直しになって大変でした」と苦笑い。料理人見習いのタケを演じた鳥越裕貴(32)は「僕、本当にループ抜けられへんねや、と…実体験を、ずっとやっている感じで。おかげで、階段を下りるの、メチャクチャ早なりました! 早送りしてないですからね!」と胸を張った。