宝塚歌劇団の宙組新トップ芹香斗亜(せりか・とあ)と、新トップ娘役春乃さくらが29日、兵庫・宝塚大劇場で、本拠地お披露目公演「PAGAD(パガド)」「Sky Fantasy!」の初日を迎えた。
芹香が芝居で演じたのはカリオストロ伯爵。「希代の奇術師」「詐欺師」「錬金術師」…18世紀後半のヨーロッパに現れた宝塚歌劇では異色のダークヒーローだ。催眠療法を駆使して、殺された母の復讐(ふくしゅう)のために生きる。
芹香は長年、トップを支える立場で、敵役を演じる機会も多く、ダークな役も持ち味のひとつになっていたが、その根幹は“雄弁”に語る目。演出の田渕大輔氏も「芹香の目ヂカラ」に期待し、芹香も「周りの出演者との芝居、相乗効果で、術をかけているように見せたい」と言い、稽古に励んできた。
劇中、セリフでは何度も「俺の目を見ろ」と引きつけるが、開幕前の取材でも芹香は「ポスター撮影の時から、目ヂカラはとても大事にしました。ただ悪い顔というだけでなく、そこに彼が抱える寂しさとか、悲しさっていうものがにじみ出ればいいなと思っています」と話していた。
芹香は「愛とは何かを知らずに生きてきたジョゼフ(主人公)が、その答えを見つける物語」ととらえ、そこへ導く、マリー・アントワネットと生き写しの令嬢ロレンツァに、春乃さくらがふんした。
春乃はマリー・アントワネットとの2役に挑戦。そのマリー・アントワネット付きの近衛隊長で、ロレンツァの恋人ジルベールは桜木みなとが情感をこめて表現。芹香演じる主人公が敵(かたき)とねらい、近づくド・モンターニュ子爵は瑠風輝が熱演を見せた。
ショーは「空」「天空」がテーマ。作・演出は中村一徳氏が手がけた。芹香も「人がたくさん出て、ロックなショー。めくるめくロックで、ガンガンにみんなが走り、踊り、歌うという、すごくエネルギッシュなショーです」とアピールしつつ、開幕に備えてきた。
初日前日の28日には通し舞台稽古で最終確認。芹香は「明日の初日から千秋楽まで、どうぞよろしくお願いします」とスタッフや仲間に感謝の思いを伝え、新生宙組を率いて第1歩を踏み出した。
宝塚は11月5日まで、東京宝塚劇場は11月25日~12月24日。