東寺初代別当(住職)、良弁(ろうべん)僧正の没後1250年に当たる今年、14日~16日までの3日間、仏殿の前庭で御遠忌法要が厳修される。その一環で「東大寺開山良弁僧正1250年御遠忌慶讃MISIA PEACEFUL PARK Dialogue for Inclusion2023」が「慶讃奉納公演」として開催された。

大仏殿前庭に設けられた野外特設会場には2日間計1万6千人観客が集まり、MISIAをはじめ、スペシャルゲストして、.ENDRECHERI.、元ちとせ、NARITA THOMAS、SIMPSON、Little Black Dress(7日)、UA(8日)という豪華メンバーがそろった。

音楽やアート、食を通じて、互いのこと、社会のこと、世界のことを楽しく学び、混ざりあい、ひとりひとりが、“インクルーシブとは何か”を体験し、体現することで、未来へのチャリティにつなげるというコンセプトで今年誕生した「PEACEFUL PARK」。8月に初開催となった河口湖に続いて、東大寺でスペシャルなゲストを招いて行われた同イベントの今回は、7日のレポートをお届けする。

すっかり日が落ち、特設会場となっている前庭から見える夜の大仏殿の荘厳さに圧倒される。「PEACEFUL PARK」のメッセージを世界中の人々が思い思いのメロディで歌う映像が流されるなか、コメントを寄せたのは、地元奈良出身で、会場に設置された「生きてるきてるだけでまるもうけベル」のモニュメントにもなっている明石家さんま。東大寺のすぐ近くの小学校に通っていたというエピソードなどを披露。

MISIAが登場し、「心を込めて音楽を奉納させていただきます」というあいさつに続いて1曲目に披露したのは「傷だらけの王者」。現在もフランスで熱戦が繰り広げられている「ラグビーワールドカップ2023」のNHKテーマソングだ。今回は、Rockon Social Clubから、成田昭次、寺岡呼人、青山英樹の3人がNARITA THOMAS SIMPSONとして参加。迫力の演奏と大仏殿が赤く染まるビジュアルに圧倒された。

そのまま2曲をパフォーマンスしたNARITA THOMAS SIMPSONに続いて、Little Black Dressがステージに。「マロニエの花」など新曲2曲で盛り上げた。

レゲエのグルーヴが大仏殿に渦巻く「ワダツミの木」を披露したのは元ちとせ。独特の節回しによる歌唱が特別な場所と相まって、最高に心地よく響いた。曲終わりで登場したMISIAも思わず「すてき」と感嘆の声を漏らす。「せっかく奄美大島からやってきたので、MISIAさんと1曲一緒にやりたいと思います」と言って披露したのは「腰まで泥まみれ」。

「花はどこへ行った」などで知られるピート・シーガーの反戦歌を日本のフォークシンガー中川五郎が訳詞したものだ。元ちとせは自身のアルバム「平和元年」に同曲を収録しており、さらにいえば、MISIAは自身のライヴで「花はどこへ行った」をカバーしている。このイベント、この場所で2人のシンガーが邂逅したからこそ実現したコラボレーションだった。

「PEACEFUL PARK」のメッセージソングMISIA ver.を煌びやかなファンクでパフォーマンスしたあと、「Higher Love」「希望のうた」と2曲続けた。

MCでは、コロナ禍の2020年7月に「音楽の日」(TBS列)で初めて東大寺で歌を奉納した時のことを語った。披露したのは、「さよならも言わないままで」。心の傷をそっと癒すような歌声とメロディーがオーディエンス1人ひとりにしっかりと届いた。

「ここ東大寺は人々の安寧を願って建てられたそうです。今、インクルーシヴな世界の実現ということが唱えられていますが、1200年以上も前からこの場所でそのことが祈られてきたんだなって、先人の想いに驚かされ、学ばせていただいています」。

そして最後のゲストをMISIAが紹介した。「次のゲストは、ここ奈良の出身で、東大寺でも歌を奉納されています。.ENDRECHERI.、堂本剛さんです」。

自分の命が始まった場所を歌った「街」、そして「あなたとアナタ」に続いて、「僕たちには愛がある。それぞれなのは当たり前。だからこそ愛は求めるのではなくて、与えるものなんだ。愛っていうのは僕たちが真っ直ぐに生きていくことなんだ」という思いを込めたという「LOVE VS LOVE」をMISIAとともに披露した。歌い合うことで曲の世界観とメッセージがより深く広がっていくのを感じられた。

.ENDRECHERI.を送り出したあとは、「アイノカタチ」「明日へ」と披露し、ラストは「あなたにスマイル:)」。ゲストを全員ステージに呼び込んでフィナーレを迎えた。「世の中がハッピーで安寧で平和でありますように!」。MISIAの願いが東大寺から届けられた。