アリスのリーダーでシンガー・ソングライターの谷村新司(たにむら・しんじ)さん(本名同じ)が10月8日、亡くなった。74歳だった。16日、所属事務所が発表した。

葬儀は親近者のみで15日に執り行った。3月に腸炎により手術を実施。6月に開催予定だったアリスの全国ツアーなどに向けて療養を続けていたが、かなわなかった。ソロでも代表曲「昴-すばる-」を生み出したほか、山口百恵さんの「いい日旅立ち」などを提供するなど、非凡なヒットメーカーがまた1人、この世を去った。

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16日午後に所属事務所が訃報を伝えた。「3月に腸炎での手術を行い療養を続けておりました谷村新司ですが、10月8日に息を引き取り永眠いたしました。本人も回復に向けて頑張っておりましたので本当に残念に思います」と報告した。

昨年、活動50周年を迎え、都内でアリスの記念ライブを開催。堀内孝雄(73)、矢沢透(74)とともに「ここからリスタートして10年続けよう」と「アリスSDGs」と銘打った目標を立てていたが、3月に腸炎のため手術し、休養。4月には、6月から予定していたアリスの全国ツアーの延期、6月には毎年恒例のクリスマスディナーショー開催の見合わせを発表していた。

谷村さんは71年に、神戸の音楽サークルの後輩だった堀内と「アリス」を結成。72年3月5日に「走っておいで恋人よ」でデビュー。同年、矢沢が加入し、「冬の稲妻」「ジョニーの子守唄」「チャンピオン」などヒット曲を連発。78年には日本人アーティストとして初めて、日本武道館3日間公演を成功させた。

74年にグループ活動と並行しソロ活動をスタートさせると、80年発売の「昴-すばる-」が大ヒット。山口百恵さんの「いい日旅立ち」や、やしきたかじんさんの「砂の十字架」など数々の名曲を生み出した。

この日の発表で、所属事務所は「昴-すばる-」について「たくさんの方々とのご縁の道を継いでくれました」と振り返り、戒名は「昴」の文字を入れた「天昴院音薫法楽日新居士(てんぼういんおんくんほうらくにっしんこじ)」とされたことも明かし「天にある星となって私たちを照らし続けてくれることだろうと思います」と説明した。

92年に加山雄三(86)と共同制作の「サライ」は、日本テレビ系「24時間テレビ」のテーマ曲として現在まで歌い継がれている。毎年、出演していたが今年は療養中のため欠席。「長期の療養となってしまい、国技館へ『サライ』を歌いに行くことができず、ごめんなさい」とコメントした。

歌手以外の活動も幅広かった。アリスとして81年8月に北京での日中国交正常化10周年記念コンサートに参加してから縁があった中国では、04年から上海音楽学院初の外国人教授として教壇にも立つなど、広く知られ、訃報に中国のSNSでも悲しみの声が上がった。12年からは東京音大の特別招聘(しょうへい)教授にも就任。タレントとしてテレビ番組のMCやラジオパーソナリティーも務めて人気を博した。「歌と音楽にピリオドはなく皆さまの心にいつまでも残る事を願って心よりの感謝を深く申し上げたいと存じます」と事務所が発表した通り、これからも谷村さんの歌や思いは世の中に受け継がれていく。