エッセイスト、モデルで全国9店舗のホテルを運営する株式会社ファーストキャビンHDの取締役を務める小林千花(28)が、今日11月1日付で社長に就任した。

東京の老舗「丸ノ内ホテル」の創業者一族に生まれ、明治学院大在学中からモデル、エッセイストとして活動。昨年9月に取締役としてファーストキャビンHDに入社。いよいよ自身の夢だったホテル経営に、社長として乗り出すことになった。このほど、小林に話を聞いた。【小谷野俊哉】

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社長として、やりたいことがある。ずっと抱いてきた夢が、現実になってきた。

「今後やっていきたいのは、ファーストキャビンを日本でナンバーワンのホテルチェーンに成長させていくことが目標です。ファーストキャビンの事業の拡大と加速を担うために、就任しました。株式上場も目指しています」

現在9店舗のチェーンを日本全国、そして世界へと拡大させる。

「日本中、世界中で『どこに行ってもファーストキャビンがあるよね』という世界を実現したいと思っています。なので、47都道府県でホテルを開業すること、そして日本一のホテルチェーンに成長させることを頑張って達成したい。それには新規の開業がすごく大事なので、私と一緒になってホテルを作ってくれる方たちを募集したいと思っています」

グレードの高いカプセルホテルの運営がファーストキャビンの業態だ。

「フランチャイズと直営店があるので、ホテル経営のノウハウがない方でも私たちがオペレーションを担うことができます。土地があったり、空きビルがあったりした場合、いろいろな用途があると思います。だけど観光業というのは日本を支える事業になると思っているので、そこの底上げも含めて一緒にホテルを作ってくださる方、共感してくれる方とタッグを組んで成長させていきたいですね」

カプセルホテルだけにとどまらない展開も考えているという。

「基本は、今のファーストキャビンの形。でも、無人ホテルでもいいと思うし、いろいろな形態のホテルも展開したいと思っています」

社長という肩書を、覚悟を持って受け止めた。

「自分の中でも覚悟して、この話をいただきました。役員会で前社長が辞任することが発表されて、その後に後任を選定する時に、他の役員の方たちが満場一致で私を推薦してくださった。そこで私もしっかり覚悟を持って、受けることにしました」

先月15日に社長就任が決定。そこから、経営者としての構想が始まった。

「びっくりしたところもあるんですけど、“新生ファーストキャビン”を、若い私のエネルギーで引っ張っていきたいと思いました。今までのやり方でいいところはしっかり残しつつ、どんどんアップグレードしていく。スピード感を持って進めたいと思っています。責任を持って、人生かけて頑張ろうっていうことです」

アップグレードの第1歩は、新規の店舗を増やすことだ。

「まず、新規出店をどんどんしていく。店舗数を増やすことが大事になってくるので、オーナーさんを見つけること、私と一緒にホテルを作ってくださる方を見つけていきたい。出店を重ねるのが、今年と来年の目標になっています。来年は10施設ぐらいは開業したいなと思っています。今10施設あるんですけど、1年間で10施設ぐらい開業していくぐらいのスピード感を持ってやっていきたい。あとはブランディング。私はPRとか広報の出身なので、そういうところでファーストキャビンというブランドを、もっともっとブラッシュアップする。そういうPRとかブランディングの側面からも会社を成長させていきたいと思っています」

今月10日には「ファーストキャビン京都二条城」がリニューアルオープンする。

「京都には1店舗だけではなく2、3店舗あってもいいと思っています。あとは空港ですね。地方都市の空港を中心にやりたいと考えています。あと一番やりたいのは、難しいんですけどバスターミナルのところ。夜行バスとかがあるじゃないですか。新宿とか横浜とかのバスタのそばに作りたいなと。あとディズニーランドに近い舞浜とかですね。夜行バスで寝ないで来たり、夜中に出発したり。そういうニーズにちゃんとマッチするような場所で、存在価値を発揮する施設にするべきだと考えています」

社長として考えるのは顧客のこと、そして社員のことだ。

「今までの仕事の延長をやりつつ、ホテルで働いている人たちが、もっと働きやすく…とかを考えています。そういうところは、ずっとテーマにしていました。若い人が活躍できる環境をつくりたいと思っていますし、もっと女性が。私も今、28歳で結構悩んだ部分もあるんですけど、キャリアを追求したいという方には、ちゃんと女性も活躍できるところを大事にしたいと思っています」

アラサー、28歳。適齢期と言われる年齢だけに、社長就任には大きな決断が必要だった。

「このお話をいただいた時に、自分の中でもすごい決意をしたというか、腹をくくった部分があります。今は本当に目標であるファーストキャビンの株式上場に向けて、新規出店が本当に大事になってくるんです。やっぱり規模を大きくするということが大事なんです。日本で一番のホテルチェーンに成長させることが目標なので、しっかりとファーストキャビンの先頭に立って、自分が広告塔になって発信していけるようにしたい。私はいのしし年で猪突(ちょとつ)猛進なので。なんか一つのことを頑張るのが性にあっている。まずはファーストキャビンで頑張って、その先に自分の結婚とか出産があったらいいなとは思うんですけどね」

社長に就任したことで、タレント活動にも区切りを付けた。

「所属していた生島企画室を、10月いっぱいで退所しました。モデル活動は辞めて、旅のエッセーを書くこととファーストキャビンの社長としてPRになるメディアのお仕事は、やっていきたいと思っています」

高級感を味わいつつ、手軽に泊まれる。そんなファーストキャビンに新たな風を送り込む。

「ただホテルの客室を売るんじゃなくて、なにか体験を提供するカンパニーにしたいと思っているんです。ここに泊まったことで、得られる体験、経験。ファーストキャビンが今後、いろいろなことを展開していく上で“さまざまな体験”といくことをテーマに学んでいくとかですね。今までは『日本一目指すぞ』みたいな空気感ではなかったんですけど、絶対にファーストキャビンは成長するし、可能性があると思っています。しっかり日本一を目指して、海外でもどんどん展開していきたいと考えています」

重責を担って、オフでもホテルのことを考えている。でも、それは楽しみでもあり、リラックス法でもある。

「休みの時は、他のホテルや新しいスポットに行ったりしています。自分の経験値を増やすことをすごく大事にしています。時間を取って体験するというのは、食事も空間もすごく大事にしています。今まではモデルのお仕事をするのが息抜きだったんですけど、これからは仕事関連以外で新しいものを探したい。何よりも、自分の夢をちゃんと実現させていきたい。夢を描いて終わるんじゃなくて、ちゃんと実現させていきたい」

社長としての夢は、始まったばかりだ。

▽10月まで所属していた「生島企画室」会長の生島ヒロシ(72)の話 突然、退社のあいさつを受けましたが、驚きませんでした。彼女を語る上で、こんなエピソードがあります。3、4年前の話ですが、パーティーに連れて行ってデヴィ夫人に引き合わせた時のことです。もちろん初対面でしたが、物おじせずに堂々とあいさつし、夫人から「アナタ、いい度胸してるわね」と言われて名刺を交換したシーンを今も思い出します。夫人を引きつける、何かがあったのでしょう!今、世の中は「二刀流」ばやりですが、さすがに「タレント」と「ホテル経営」は難しいと思いますので、芸能界…生島企画室で勉強し、培った“モノ”をフルに生かして欲しいです。DNA的には申し分ありませんし、28歳の若さで大抜てきされたのには何か『持っている』はずです。上場目指し、頑張ってください!

◆小林千花(こばやし・ちか)1995年(平7)10月3日、東京生まれ。聖心女学院初等科、中等科卒。宝塚を目指し日本音楽高入学。明治学院大在学中からモデル、エッセイストとして活動。19年5月に舞台「MOTHER」で女優デビュー。22年9月に取締役としてファーストキャビンHD入社。23年11月1日に代表取締役社長就任。155センチ。血液型O。