宮沢氷魚(29)が映画「エゴイスト」(松永大司監督)や「はざまに生きる、春」(葛里華監督)で石原裕次郎新人賞に輝いた。「エゴイスト」では鈴木亮平(40)も主演男優賞を受賞。石原裕次郎新人賞には100万円が贈られる。

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昭和を代表するスターでありながら、映画「黒部の太陽」を三船敏郎さんとともに製作したプロデューサーの顔を持つ石原裕次郎さん。その名を冠した石原裕次郎新人賞の歴代受賞者には木村拓哉、岡田准一ら、そうそうたる顔触れが名を連ねる。宮沢は「本当にすごい方々が受賞してきた賞を受賞できたことがうれしい」と喜びをかみしめた。

「エゴイスト」では、主演男優賞を受賞した鈴木亮平と互いに引かれ、愛し合う2人を演じた。「時に自分である時間と役である時間を分離させる必要があるんですけど『エゴイスト』の時は(演じた)龍太に、亮平さんも恐らく浩輔さんになっていた。そこまでのレベルで役が自分に入ってくる感じは初めての経験」。演技を超え、役として生き抜いた表現は、アジア全域版アカデミー賞「第16回アジア・フィルム・アワード」(AFA)最優秀助演男優賞に結実した。

「はざまに生きる、春」では、発達障害の特性を持つ画家の繊細な心情を細やかに演じきった。自らの主演映画の企画と脚本を募集する映画製作者発掘プロジェクトで審査員を務め、企画を選ぶなど製作に主体的に関わった。「映画がすごく大好きで、これからも関わっていきたい。今、役者は出て終わりの時代ではない。いろいろな役割がある」と力を込めた。

そうした姿は、裕次郎さんにも重なる。「ご本人が生きている時を生で見てはいないですけど…語り継がれる人」と裕次郎さんを評した。その上で「自分の時代が終わっても『宮沢氷魚という役者がいたよね』と、名前と出演作が後世に語り継がれるような人になりたい。こんなことを言うと失礼かも知れないですけれど、目指している指針、大きな存在」と口にした。

鈴木とのダブル受賞を「同じ所で賞がもらえるのは、ずっと僕たちが願っていたこと」と心底、喜ぶからこそ誓いを立てた。「また亮平さんと一緒にやりたいんですけど…まだできない。今は自分の中にある『エゴイスト』を味わい、大事にしたい。新しい人物同士として役を全うできる時が来たら」。決意を込め、映画人として歩いて行く。【村上幸将】

◆宮沢氷魚(みやざわ・ひお)1994年4月24日、米サンフランシスコ生まれ。15年、メンズノンノ専属モデルオーディションでグランプリ。17年TBS系「コウノドリ」で俳優デビュー。NHK連続テレビ小説は20年「エール」と22年「ちむどんどん」。舞台は「パラサイト」など。184センチ。

 

◆エゴイスト 田舎町でありのままの自分を隠していた浩輔(鈴木亮平)は、東京の出版社でファッション誌の編集者として自由な日々を送っていた。パーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)と引かれ合い満ち足りた時間を重ねたが、ドライブに出かける約束をしていたある日、龍太は姿を現さなかった。

 

◆はざまに生きる、春 雑誌編集者の小向春(小西桜子)は仕事も恋もうまくいかない日々を送る中、青い絵しか描かないことで有名な画家・屋内透(宮沢)と取材で出会う。思ったことをストレートに口にし、感情を隠すことなくうそがつけない屋内に戸惑いながらもひかれていく。

▼石原裕次郎新人賞・選考経過 宮沢氷魚と目黒蓮の一騎打ち。宮沢は「LGBTQとはどういうものかの佇まいが見事だった。世界的にも評価が高い」笠井信輔氏)「裕次郎さんっぽいのは宮沢さん」(河内利江子氏)と存在感とスケールを評価された。

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昨年「今夜、世界からこの恋が消えても」で石原裕次郎新人賞を受賞した道枝駿佑(21) このたびは石原裕次郎新人賞受賞おめでとうございます! 今回、宮沢さんに向けて、このような機会をいただけて大変うれしく思います。これから作品の場で宮沢さんと、お芝居させていただける日が来ることを楽しみに精進したいと思います! 本当におめでとうございます!

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石原裕次郎新人賞を受賞された「宮沢氷魚」さん。発達障害の画家、シングルマザーで病弱な母親を支えるけなげな青年、ミステリアスで狂気を内に秘めた明智光秀を、それぞれとても難しい役柄ですが、彼自身の魅力を役柄にうまく取り入れ演じられておりました。今後、日本を代表する俳優になっていくだろうととても楽しみです。

石原音楽出版社 取締役名誉会長 石原まき子