大月みやこ(79)が10月22日に、東京・築地の浜離宮朝日ホールで「大月みやこコンサート~このひと時 今もあなたと~感謝を込めて…」を開催した。
今年は「昭和100年」で、同コンサートのテーマだった。4部構成で、第1景「日本調の世界」は、都々逸(26音からなる短い歌謡)や木やり(労働歌)、民謡を披露。第2景「モダンな歌謡曲の世界」では、「君の名は」「東京ラプソティ」など。第3景「歌と台詞で綴る歌謡曲」では、傑作アルバム「橋ものがたり…十抄」を聴かせた。そして第4景「オリジナルヒット曲」で、「女の港」「白い海峡」、新曲「恋の終止符(ピリオド)」などを一気に歌い上げた。
「昭和100年に、大月みやこあり」を実証するコンサートだった。
大月のコンサートを聴くと、いつも感動し、時には涙してしまう。大月の誰にもまねできないファルセット(通常の音域より高い声で歌う唱法)など、歌謡界屈指の歌唱力のせいであることは間違いない。
もう1つ、日本語の美しさ、響きを大切に歌っていることにある。かつてインタビューに「顔に表情があるように、歌にも表情がある。そして言葉にも表情はあります」と語っている。
その言葉通り、大月のコンサートは言葉が明瞭で、主人公の心情、息遣いはもちろん、情景や時代背景さえ伝わってくる。
そんな大月に「歌わせたい」「歌ってほしい」という作家陣の、強い意気込みも感じる。特に歌詞の力は大きい。
前述の「橋ものがたり」は、大阪を舞台に橋にまつわる女の人生を、大阪弁で語り、歌う。その1曲「くらやみ橋から」(作詞・杉紀彦)は引き込まれる。
昭和10年ころ、岡山・倉敷から、歌人を目指し大阪に来た女学生が、不景気と軍靴が響く時代の中で、闇に落ち、橋から身を投げる悲しい歌である。
「酒でものましたってみいな 誰とでもすぐやで」(セリフ)の陰口。そんな転落していく姿を「生きてみたってしょうがない 死んでみたってしょうがない」「夢を捨てれば軽くなる 心捨てれば軽くなる」と歌う。
重い歌で、内容は時代錯誤かもしれない。しかし、大月の言葉が、逆に純粋な女学生の短い一生、理不尽な時代背景を浮き彫りにする。大月でなければ、表現できない世界である。
大月は常々「(作家やスタッフに)女を歌う世界をつくってもらった」と語る。代表曲「女の港」。日本レコード大賞最優秀歌唱賞曲「女の駅」。そして同大賞曲「白い海峡」は、その代表例である。
「憧れた東京は 女の谷間 落ちたら深く 沈むばかりよ」(「白い海峡」、作詞・池田充男)。
もちろん作曲の素晴らしさもあるが、大月は「言葉は歌手にとって最大の武器」と語っている。
今回のコンサートで、テーマの「昭和100年」を見事に、美しい日本語で歌い上げた。
「年月を重ねることはいいこと。幸せがたくさん見えて、今が一番幸せを感じています」
「今のこの声で、今の大月を感じ、今がすてきだなと感じてもらえるように頑張ります」
大月はしみじみとファンに語りかけた。歌詞同様、心に染み入る言葉だった。【笹森文彦】



