今月11日から15日まで、東京・新宿のシアターサンモールで上演された、舞台「黒革の手帖」を見てきた。言わずと知れた松本清張原作の名作。務めていた銀行から巨額の金を横領して、銀座の「クラブ・カルネ」のママに転身した原口元子が“黒革の手帖”に記した秘密を武器にしてのし上がっていくピカレスク長編だ。

過去に何度も映像化された作品を見た。山本陽子、大谷直子、浅野ゆう子、米倉涼子、武井咲ら名だたる女優がドラマに主演。特に米倉と武井は、女優としての名声を確立した出世作とも言える。

今回の主演は秋澤美月(27)。相手役の国会議員秘書・安島富夫を金子昇(51)が演じた。舞台版を見るのは初めてだったので、気合を入れて初日に見た。途中で休憩を入れた2時間40分は見応え十分だった。時折入るミュージカル風のシーンを始め盛りだくさんだ。

びっくりしたのは休憩後の2部のオープニング。原口元子の“銀座での師匠”とも言える「クラブ・燭台」のママ、岩村叡子を演じたベテラン女優有希九美が、エディット・ピアフ、そして越路吹雪で知られるシャンソンの名曲「愛の賛歌」を歌い上げたのだ。1部では銀座のベテランママとして重厚な演技を見せていたけど、その堂々たる歌いっぷりに驚いた。

終演後に有希に話を聞くと「歌う場面ではなかったんだけど。ダンスだけの予定が急きょ、歌うことになりました。演出の野口大輔さんに『ちょっと歌ってください』と頼まれて、OKしたら初日が近くなってフルで歌うことになりました」と笑った。

18日から22日は、場所を東京・渋谷のCBGKシブゲキ!!に変えて、上演される。野口は「渋谷では、主役の2人を澄華あまねさんといしだ壱成さんが演じます。ちょっと音楽も多くなります。また、違った『黒革の手帖』をお楽しみください」と話している。【小谷野俊哉】