「35歳を回ると羊水が腐る」との不適切発言が非難を浴び、活動を自粛していた歌手倖田来未(25)が12日、静岡・袋井市のエコパアリーナでコンサートを行い、72日ぶりに仕事復帰を果たした。自粛中は自らの軽率な発言を深く反省し、歌手引退まで考えたという。だが、ファンの温かい励ましに「背中を押してくれる人がいる限り歌い続けたい」と再起。最後は「倖田来未でよかった」と言葉を詰まらせた。

 「多くのご迷惑ご心配をお掛けしました。心よりおわびします。今日は来てくれてありがとう。みなさんと楽しい時間を笑顔で過ごしたい。倖田来未、頑張りますっ」。72日ぶりの仕事復帰となるライブツアー初日は、開演前に謝罪するという異例の展開でスタートした。

 ラジオ番組で、不適切発言をしたのは1月29日。同31日に都内で新アルバム「Kingdom」の発売イベントを行ったが、それを最後に活動を自粛。2月いっぱいは自宅にこもった。自らまいた種とはいえ、取り返しのつかぬ失言に食事ものどを通らぬほど落ち込み、枕をぬらす夜が続いた。「愛や夢を伝えようと歌手を志したのに…。180度違う発言をしてしまった。自分には歌う価値がないのではないか」。一時は歌手引退まで考えたという。「本当は歌いたい。でも、歌う資格があるのか…」。自問自答の日々が続いた。

 事務所に送られてきた批判や激励の手紙やメールは数百通にものぼった。そのすべてに目を通し、歌手を志した原点であるDREAMS

 COME

 TRUEのライブビデオを繰り返し何度も何度も見た。映像では何万人ものファンが感動の涙を流し、ステージと一体となって楽しむ姿が流れている。「応援してくれるファンがいる限り歌いたい」。原点を見つめ、長いトンネルの中で見つけた結論がコンサートへの強い決意だった。3月に入るとリハーサルを開始。最高のステージにしようと、これまで以上に心血を注いでこの日に備えた。

 だが、歌う決意は固めたが、幕が開くまでは猛烈なプレッシャーと不安はぬぐえない。前日は朝方まで寝付けず、起床すると体のしびれを感じて、開演直前まで腕のしびれが残っていたほど。「今日は元気で笑顔のクーちゃんでいきます」と宣言していたものの、最後には、ファンの温かい声援に言葉が詰まった。「すごくつらかったけど、倖田来未でよかった」。“泣き虫クーちゃん”になって、何度も「ありがとう」を繰り返した。【松本久】