若手漫才トーナメント「M-1グランプリ」決勝が20日、東京・六本木のテレビ朝日で行われ、無名のパンクブーブーが9代目王者に輝いた。01年の1回目から出場も、初めての決勝進出。無欲で晴れの舞台を踏んだ2人は、決勝の初回で首位だった笑い飯の優勝と思い込み、ツッコミ担当の黒瀬純(34)は、「全然、意味が分からない」とぼう然とした。優勝賞金1000万円だけでなく、知名度も一気に獲得した。

 2人の目が点になった。最終決戦は、8年連続ファイナリストの笑い飯と、昨年覇者NON

 STYLEとの争い。強敵の2組を相手に、陶芸家に弟子入りしようとするボケた素人という、古典的かつ王道のネタで、正攻法に戦った。結果は、満場一致の圧勝劇。それでも、2人だけは信じられない。「パンクブーブーって誰?

 全然分からない…」と、黒瀬は驚きすぎて涙も出なかった。初めての決勝進出が決まった7日には、黒瀬が大泣きしただけに、ボケ担当の佐藤哲夫(33)も「なぜ、相方が泣かないのか不思議です」と驚くばかりだ。

 お笑いファンの間では「無冠の帝王」と呼ばれていた。たまに出るテレビでウケも取っていた。ただ、賞には縁がなかった。M-1も、過去8年で準決勝5回が最高。不遇の時代は長く、地方の営業では「釣りのアユ解禁祭りで、川のいかだでネタを披露したら、釣り人から、えさを投げつけられた」(黒瀬)という。だが、M-1の決勝進出は本気で狙い、「穏やかな2人が、ネタ仕込みではけんかするようになった」と佐藤は振り返った。

 それでも玄人からの前評判は高かった。大会委員長島田紳助は「決勝前に、渡辺正行さんから『パンクブーブーがV候補らしい』と聞かされていた。僕は『誰それ?』って知らなかったけどね」と明かした。

 無名ゆえに「(現在の)月給は13か14万」という。紳助から「優勝したら、ほかの事務所所属なら10倍、吉本なら1・8倍に給料が増える」と言われた。佐藤は「ようやく食っていける。でかくて安いパンだけじゃなく、おいしいパンを食べたい」と頭をかいた。

 夜が明けると、スターへのチャンスが用意されている。紳助は「楽屋に戻ったら、さっそく、『行列のできる法律相談所』のプロデューサーから電話があったで」と仕事を依頼された。「喜びよりも怖い。今日から毎日がオーディションです」と黒瀬。何もかもが、予想外の優勝だった。

 [2009年12月21日10時19分

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