作家で作詞家のなかにし礼氏(73)が5日、コメンテーターを務めるテレビ朝日系生情報番組「ワイド!スクランブル」で、食道がんであることを告白した。すべての仕事をキャンセルし、闘病生活に入ることも明かした。同番組もしばらく休む。

 番組終了間際に私事と断って約3分間話した。「先日、調子が悪かったので、胃カメラをのんだら、食道にがんがあると言われました。初期というわけでなく、もうちょっと進んでいます」。

 関係者によると、なかにし氏は先月17日に「胃のあたりが重い感じがする。いままでにない感じだ」と話したという。同24日に検査し食道がんと分かった。

 なかにし氏は54歳だった92年に心筋梗塞で倒れた。心臓の5分の2が壊死(えし)した状態。以後、体調には十分、気遣ってきた。食道がんの治療に関して、関係者は「心臓への負担など、まずはいろいろ検査し、最良の(治療の)方法を考えていく予定です」と話した。

 なかにし氏は、14日から始まる歌手石川さゆり(54)の明治座公演では、第1部の「貞奴

 世界を翔る」の脚本と音楽監修を担当。25日発売の記念曲「浜唄」も作詞した。石川の関係者は「先生から、さゆり本人に連絡があったそうです。早く良くなってほしい」と説明した。

 なかにし氏は同番組で「こんなことが自分に巻き起こるなんて思ってもみなかった。起きてしまったらしょうがない。ジタバタせずに受け止める」と淡々を語った。

 ◆なかにし礼(れい)本名・中西礼三。1938年(昭13)9月2日、旧満州(現中国・黒竜江省牡丹江市)生まれ。ハルビンで終戦を迎え46年10月に帰国。65年、立大文学部仏文学科卒。作詞家として「天使の誘惑」(68年、黛ジュン)「今日でお別れ」(70年、菅原洋一)「北酒場」(82年、細川たかし)で3度日本レコード大賞を受賞。ほか「恋のフーガ」「港町ブルース」「石狩挽歌」「時には娼婦のように」「まつり」などヒット曲多数。作家として00年に「長崎ぶらぶら節」で直木賞受賞。引き揚げ体験を描いた「赤い月」は映画、ドラマ、舞台化された。