東京・池袋の都道で19年4月に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で在宅起訴された、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の第2回の公判が3日、東京地裁で開かれた。

この日は、事故を目撃した3人の目撃者が証言台に立った。飯塚被告は10月8日の初公判の際に「アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶しております。車に何らかの異常が生じたから暴走したと考えます」と無罪を主張しているが、3人の目撃者はいずれも「ブレーキランプの点灯を見ていない」と証言した。うち1人は「あおり運転かと思ったほど、危険な走行をしていた。(飯塚被告の車が)ゴミ収集車にぶつかるまで、1回もブレーキランプは点灯しなかった」と証言した。

検察は、飯塚被告が走行中に車線変更を繰り返す中でアクセルを誤って踏み、時速60キロから84キロまで加速させたこと、その後も踏み続けた結果、事故発生当時は96キロまで加速していたと説明。車の故障診断センサーにアクセル、ブレーキともに故障の記録がない上「アクセルを踏み続けた一方、ブレーキを踏んでいないデータが記録されている」とも指摘している。

被害者参加制度を使って裁判に参加した、遺族の松永拓也さん(34)は公判後、取材に応じ「あくまで私の考えは、やっぱり踏み間違えであろうと思いますが、司法が今回の証言を受けて、どう判断するかを注視していきたい」と語った。

公判中、飯塚被告が対面する遺族の方に視線を送る場面もあったが、松永さんは自らの後方に設置されたモニターに、実況見分時の地図が映し出されたのを見ていただけではないかと指摘した。松永さんは「最初は、私のことを見ているのかなと感じたんですけれども、画面上に現場の状況を書いた地図がモニターに映った時だけ顔を上げて、地図が消えた段階ですぐに目を伏せた。この人は私を見ているのではなく、恐らく自分が(裁判で)有利になるためには…ということに頭を巡らせていたのでは? という印象を受けた」と、冷静な口ぶりながらも憤りをにじませた。

その上で、松永さんは「私は裁判前から、ずっと2人(亡くなった妻子)の命と私たち遺族の無念と向き合って欲しいと、ずっと言い続けている。やはり現在も(飯塚被告から)それは感じられない。私も残念。みんな残念だと思う。私は真実が知りたい」と訴えた。