第49回衆院総選挙(31日投開票)は19日に公示され、12日間の政権選択選挙戦に突入する。18日、東京15区から立候補予定の秋元司前衆院議員(49)が出馬見送りを発表した。

同氏はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件で自民党を離党し、収賄などの罪で逮捕、起訴されて1審で実刑判決を受けて控訴中。自民党本部との最終調整の結果で、異例の出馬断念となった。

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公示まで24時間を切ったタイミングで急転直下の出馬断念となった。18日午後4時30分すぎから、国会内で記者会見を開いた秋元氏は「明日からの衆院選挙へ向けて、第一声できる準備を整えてきた」とした上で「(自民)党とも都連とも話をさせていただき、今回は出馬を見送る」と苦渋の決断を語った。

出馬断念の理由として、自民党が前職の柿沢未途氏と、元職の今村洋史氏(ともに無所属)を推薦候補としたことで「出馬をすることになると政党政治を否定する行為につながる」とした。自民党は当選した方に追加公認するとみられている。秋元氏は無所属で4選を果たし、復党を目指しており、最終的に党本部の強い意向をのんだ形だ。

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件で、秋元氏は9月に懲役4年の実刑判決を受けたが、無罪を主張して控訴し、現在は保釈中だ。秋元氏は、この日の朝も選挙区の駅前で街頭演説に立ち、午後も選挙カーが選挙区を走り回っていた。

だが、与党で過半数死守を掲げる自民党にとって実刑判決を受けながら出馬し、復党を公言する秋元氏の存在は火種となりかねない。「政治とカネの問題」という急所を、秋元氏の選挙戦を通じて報じられれば、逆風となって全国に波及する可能性がある。甘利明幹事長の金銭授受問題などが再燃する引き金となる懸念も広がり、党本部による「秋元封じ」とする見方が強い。

秋元氏が出馬断念した東京15区は、これで7候補が立候補を予定している混沌(こんとん)の激戦区だ。秋元氏は選挙戦で今村氏を「側面で支援していく」と明言。前回2017年は希望の党から出馬した地元出身の柿沢氏とはライバルだけに「なぜ党本部が推薦候補とするか理解できない」と不快感をあらわにした。

まさかの秋元氏撤退に今村氏は「驚いている」とし、柿沢氏は「政治の世界は何が起こるか分からない。自分自身がやることに全集中していく」と語った。前回トップ当選した秋元氏の撤退と今村氏支持で、混沌は、さらに深まりそうだ。【大上悟】