将棋の藤井聡太3冠(王位・棋聖・叡王=19)が5日、大阪市の関西将棋会館で行われた第71期王将戦挑戦者決定リーグで、豊島将之竜王(31)を101手で破り、王将戦初挑戦に前進した。将棋界で最も過酷と言われる同リーグで藤井は1人だけ無傷の開幕3連勝。9日には同リーグで3勝1敗の羽生善治九段(51)と対戦する。豊島は2勝3敗となり、挑戦の可能性がなくなった。

戦型は相掛かり。中盤から豊島が積極的に攻め、藤井が冷静に受けた。終盤には激しい攻め合いになり、リードを広げた藤井が鮮やかに寄せきった。

終局後、藤井は「方針が分からなかったところもあった」と振り返り、3連勝には「前半をいい形で終えることができた。残り3局も精いっぱい、指したい」と話した。

これで両者の対戦成績は藤井の12勝9敗。豊島とは今夏から3連続タイトル戦で対戦。初防衛した王位戦、奪取した叡王戦、史上最年少4冠獲得がかかる第34期竜王戦7番勝負では3連勝し、竜王奪取に王手をかけている。17年のデビューから6連敗した“難敵”だったが、今年に入ってから巻き返し、これで直近6連勝となった。

第71期王将戦挑戦者決定リーグは、渡辺明王将への挑戦権を争う7人の総当たり戦。スケジュールの都合上、藤井は他の棋士と比べると進行は遅いが、全勝すれば初の王将戦挑戦となる。“無敵状態”に入った19歳が年度内5冠を視界にとらえた。【松浦隆司】

◆過酷な王将戦挑決リーグ 7人総当たりの王将戦挑戦者決定リーグは日程の都合上、9月下旬または10月上旬から年内に各6局を行い、挑戦者を決めなければいけない。間隔を詰めて次の相手と戦うため、連敗するとあっという間に挑戦権争いから脱落する。リーグ戦の期間中、7人は順位戦をはじめ、竜王戦や王座戦といったタイトル戦、棋王戦挑戦者決定トーナメント、朝日杯やJT杯など、体調を維持しながらトップクラスの棋士との対局を掛け持ちとなるのも、過酷と言われる理由だ。