将棋の史上最年少5冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=19)が9日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた第80期順位戦B級1組最終戦で佐々木勇気七段(27)を下し、リーグ成績10勝2敗のトップでA級初昇級を果たした。

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【イラスト】将棋界順位戦の格付け

藤井竜王のA級初昇級に、「ひふみんアイ」でおなじみの加藤一二三・九段(82)は、「待ってました」と手を打った。

来期のA級(10人総当たりのリーグ戦)には、現在の将棋界を代表するトップ棋士がそろっている。順位1位は渡辺明名人か、渡辺との名人戦7番勝負に2年連続で挑戦する斎藤慎太郎八段の敗れた方。以下、前期残留の糸谷哲郎八段、佐藤天彦九段、豊島将之九段、広瀬章人八段、永瀬拓矢王座、佐藤康光九段、菅井竜也八段。全員、タイトル獲得経験者だ。これに藤井と、5年前の名人戦挑戦者の稲葉陽八段の昇級組2人が加わる。

「百戦錬磨の強敵ぞろいの中で、藤井さんが磨きをかけてきた角換わり、相掛かりという看板の戦法がどこまで通用するか、注目したい」(ひふみん)。

1993年(平5)、ひふみんが53歳でB1からA級に復帰した際、もう1枠で初昇級したのが羽生善治九段だった。当時、王位・王座・王将・棋聖の4冠。順位戦でもトップとなり、そのまま名人へと駆け上がった。「実績だけ見れば、5冠の藤井さんも十分戦える実力はあります。初戦からの快進撃と、谷川さんの史上最年少名人(21歳2カ月)の記録更新を期待したいです」。

小学生の時の文集で「名人をこす(原文のまま)」と、将来の目標を書いた。「私は強くなれば勝てるという人生観ですが、設定した目標を公言するのはいいこと。まさに、名人獲得に照準を定めたと言えましょう」と話していた。

 

◆藤井竜王9日の対局

対局は、角換わりから積極的に踏み込んだ佐々木ペース。「失敗した」と思いながら、時間を使って藤井が防戦する。手番が回って反撃し、際どい終盤の攻防もしっかり読み切った。 19歳7カ月での昇級は、18歳1カ月で決めた加藤一二三・九段(82)に次ぐ、2番目の若さ。名人への挑戦権を争う来期のA級順位戦は、今年前半から来年3月にかけて行われる。成績最上位者として挑戦権を得て、名人戦7番勝負で先に4勝すれば、谷川浩司九段が1983年(昭58)6月に達成した21歳2カ月の史上最年少名人獲得記録を更新する。「昇級できたのはよかったです。今期の課題をしっかり振り返って、来期、挑戦争いに加われるよう頑張りたい」と話した。