戸田市長選(20日投開票)が13日に告示され、スーパークレイジー君氏(35、本名西本誠)がサプライズ電撃出馬した。

午前8時すぎに戸田市役所に登場した。スーパークレイジー君党から出馬するとみられていた同党側近の女性と市選挙管理委員会を訪れたが、手続き直前に急転直下。「私が出ます」。選管側は「えっ、そうですか。審査が必要なので、少し時間がかかります…」と戸惑いの表情を見せる一方、陣営はスタッフが「市長か俺か!」とキャッチフレーズ入りのジャンパーを着用し、選挙ポスター、選挙カー、アナウンス担当などもすでに準備するなど用意周到だった。約1時間半後、審査が認められ、通称の「スーパークレイジー君」での立候補が確定した。

最終決断は3日前だった。今夏の参院選出馬も水面下で準備を進めているだけに、賛否両論あったのも事実だ。「一番大きな理由は、戸田の市民に選択肢がないのはダメだと思った。まだまだ未熟者な私ですが、無投票なのはいけない。『市のために、頑張って』という市民の声も大きかった。売名ではない」。前回の市長選は約11万人中、投票したのは約4万人だった状況にも触れ、「約7万人の票が眠っている。戸田市は若い世代が多い街。若い方が選挙などに興味を持ってくれるきっかけにもなればいい」と出馬理由を明かした。

早速、市役所前の選挙ポスター掲示板に、みずからポスターを貼った。同敷地内で朝市が行われており、大勢が集まっていた市民から「あっ、スーパークレイジー君、本物だ」「え~、市長選に出るの。投票にいかなくちゃ」などの声をかけられた。市議として、子ども支援などにも尽力してきただけに、家族連れや、子どもたちに声をかけられ、記念撮影する場面もあった。

歌手の同氏は昨年1月に同市議に初当選し、1年以上務めてきたが、市選管から3カ月以上の居住条件を満たしていないと指摘され、県選管でも当選無効の決定をされた。取り消し無効を求め、東京高裁、最高裁と上告を続けたが、いずれも棄却され、今月4日に失職が正式決定したばかり。市長職には「戸田市内での居住3カ月以上」の条件はない。

自身のツイッターでは、7日に「3月13日の戸田市長選挙は無投票になるのならば擁立は考えております。僕は夏の参議院選挙全国比例区の事もあり勝手な行動はできません。選挙が行われないことは良くないことだと思います。負け戦が怖くて誰も出ないで決まるのはどうなのですかね」。12日にも「明日から戸田市長選挙の応援に回ります。無投票ならばの話です。市民に選択肢はあるべきだと思っています。市長に対し僕はリスペクトは勿論していますし恨みもありません!」と投稿していたことから、スーパークレイジー君党から候補者を擁立する意向を示していた。出馬が確実だった現職の菅原文仁市長(46)に対し、対抗馬として他の候補者が名乗り出ないことを想定し、失職からわずか9日後の決断だった。4月からは日大通信教育部法学部政治経済学科に入学する予定だ。

菅原氏も同日午前11時からJR戸田公園駅前で出陣式を行った。無投票再選の可能性があった中で、さいたま市の清水勇人市長、和光市の柴崎光子市長、埼玉県の上田清司前知事ら豪華メンバーが応援に駆けつけた。菅原氏は「一番優先しなくてはいけないのはコロナ対策、コロナの克服。大胆な発想で市民の命と暮らしを守り抜く」と決意表明。対抗馬となったスーパークレイジー君氏については「とにかく有名な方。全国の知名度はたいへん負けている。戸田市内では同じくらい。気を引き締めて市民1人1人に安定したまじめな政治を1週間訴えていきたい」と冷静に宣戦布告した。【鎌田直秀】