旅行代金を最大40%割り引く全国旅行支援が今日11日から46道府県、東京都では20日から始まる。新型コロナウイルスのまん延で疲弊した旅行業界においては、復活の起爆剤になるかもしれない。宿泊関連では知恵をしぼってさまざまなサービスを提供している。そこで「令和のアン・キン・タン」を探ってみた。【取材・構成=寺沢卓】
旅行業界における「アン・キン・タン」とはバブルが崩壊した1990年代に「安くて、近場で、短期で」というお財布にやさしい新しい価値観を「安近短」という漢字で表したものだった。
さて「ウィズコロナ」を意識する令和時代の「アン・キン・タン」はどうなるのか? 「安心安全」の「アン」、「近所巡回」の「キン」、そして「単独行動」の「タン」となりそうだ。それぞれに具体例をみてみよう。
■品川プリンスホテル 「安」心「安」全
宿泊プランではないが、品川プリンスホテル(東京・港区)では昼間のティーラウンジ利用が増えている。一般的にはチェックアウト(午前10時ごろ)からチェックイン(午後3時ごろ)のホテルは、部屋を含んだ館内清掃に専念する時間だった。
ところがこの時間に人の出入りが少ないこともあり、新型コロナウイルス対策として安心安全な環境下のアフタヌーンティーが注目されている。品川プリンスホテルのダイニング&バー「テーブル9TOKYO」(メインタワー39階)で2020年7月から始まったコース形式のスイーツのティーセットが大人気という。
20年3月までは「スイーツビュッフェ」として利用客が並んだスイーツをテーブルで選んでピックアップする方式。広報担当者は「お客さまが行き来するエリアをつくらずにみなさまが着席するテーブルまでお持ちすることで感染リスクを減らして、安心して午後のひとときをお過ごしいただける」と説明した。
内容は甘いモノだけではなく、スモールサイズのハンバーガーやナスのムース、サーモンのミキュイ(半生を意味するフランス語)、栗のクレープと豚肉のミルフィーユなど酒宴のおつまみとしても成立する「セイボリー」と5種のバラエティーデザート、メインはパフェまたは絞りたてのモンブランを選べる。さらに食べ放題のスイーツ「プティフールバー」に約20種の飲料もフリードリンクで選び放題だ。
平日なら完全予約制で午後0時30分~同5時、ゆったり使えて1人5800円。優雅な気分でおなかを満たしながら腰を据えた商談にも対応できそうだ。
■メルパルク横浜 「近」所巡回
メルパルク横浜(神奈川・横浜市)は立地条件をいかしてアピールする。すぐ横にはマリンタワーがそびえ、道路をはさんで山下公園が広がり、氷川丸、港の見える丘公園、中華街、大さん橋すべてが徒歩圏内で移動できる。山下埠頭(ふとう)で展示されている機動戦士ガンダムの実寸モビルスーツ(ロボット)も、今なら山下公園経由ですぐに行けてしまう。
メルパルクグループは「郵便貯金会館」で親しまれてきたが2000年初頭からの郵政民営化で「メルパルク」に名称統一された。コロナ禍の影響もあって9月末で東京、仙台など6カ所が閉鎖され、現在は横浜、大阪、名古屋、広島、熊本の5カ所が営業している。
メルパルク横浜の柴田剛尾支配人(59)は「横浜の名所に歩きながら回れます。私も横浜出身なので何でも聞いてください」と話す。柴田支配人とは高校時代の同級生の中華の千葉光治料理長(59)が腕をふるって、今日11日からは「ホテルで食べる町中華」をテーマに1泊2食プランを1万4000円でスタートさせる。千葉料理長は「大きなエビでチリ&マヨの人気2種をひと皿にした。豚角煮を花巻パンで挟んでもいい。町中華をちょっと豪華にしたコースをお楽しみください」と笑顔をみせた。
■年間民宿「蔵屋敷」 「単」独行動
「民宿の里」として知られる岩井海岸(千葉・南房総市)ではコロナ禍で利用客の単独化が進んでいるという。岩井の年間民宿「蔵屋敷」では、夏季のスポーツ合宿がこの2年間、ほぼなくなり、その代わりに単独客の問い合わせが増えたという。
宿主の小澤さとみさん(54)は「民宿なのでコロナ禍の前では、個人のお客さんはほとんどいなかったですね。過去に団体利用されていた方々から広がっていったようです」と語り「元々、各お部屋にお食事をお持ちしていたこともあって、他のお客さんとの接触もないこともあってご利用が伸びたんだと思います」と語った。
蔵屋敷では地元産の野菜や魚を使った手作りの朝食が特徴的だ。米、野菜は地元農家、ひじきや魚も地元漁師から仕入れている。写真のカマスは小澤さんが開いて塩をふった自家製干物。個別の朝食だけの販売はせず、1泊2食付き7500円の宿泊客にしか朝食サービスはしていない。
今日11日から全国旅行支援が始まる。2年前の「Go To トラベル」は指定宿となったが、小澤さんは「今回はどうしようかまだ考え中です。今の金額で満足していただけるお客さまもいるので、ちょっと様子をみてみます」と思案顔だった。
■全国旅行支援とは 東京都は20日から
旅行する個人で最大1万1000円が国から補助されるシステム。46道府県は11日から、東京都は20日から(12月20日まで)。
旅行代金が最大で40%引きとなるが、割引額の1日上限は「交通費込みの旅行」は8000円、それ以外のプランでは5000円。対象地区で使えるクーポン券が平日ならば3000円、休日ならば1000円が付与される。現地での利用の際にはワクチン3度接種かPCR検査での陰性証明の提示が必要。
たとえば、メルパルク横浜の千葉料理長の町中華を食べる宿泊プランであれば、1泊2食が1万4000円。40%の割引額は5600円だが、この場合上限額の5000円が採用され、料金は9000円となる。さらに平日ならばクーポン券3000円もゲットできるため、利用客は実質1人6000円の出費ですむことになる。

