将棋の第48期棋王戦コナミグループ杯5番勝負第2局が18日、金沢市の「北國新聞会館」で行われ、後手の藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が渡辺明棋王(名人=38)を132手で下し、棋王初奪取と史上最年少6冠にあと1勝とした。第3局は3月5日、新潟市「新潟グランドホテル」で行われる。藤井が勝てば、羽生善治九段(52)の24歳2カ月の最年少記録を29年ぶりに更新する。棋王11連覇を目指す渡辺はかど番に追い込まれた。

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鮮やかに寄せ切った。先手の渡辺が深く研究した角換わりに誘導すると、藤井は堂々と受けて立った。午前9時から始まった対局は午後6時になっても、AIの評価値がほぼ互角の大熱戦。お互いが深く読み合っての中盤のねじり合い。「駒損で苦しく、決め手を与えないように粘れるかどうかと思っていた」。最善手を指し続け、プレッシャーをかけた。

終盤にわずかにリードを広げると、角を2枚使った鮮やかな攻撃で渡辺玉を追い詰めた。終局後、大勢のファンが詰め掛ける大盤解説会に登場した藤井は「難しい将棋でした」と振り返った。

これでシリーズ2連勝。対渡辺戦は6連勝。タイトル戦での対戦成績も10連勝とした。「後手番でどうやって戦うかが課題です」。第2局を前に口にした「課題」も克服した。1月の王将戦7番勝負第2局の羽生善治九段(52)から続く後手番での連敗を「3」でストップした。

本年度の先手番の成績は27勝1敗(未放映のテレビ棋戦を除く)。後手番の成績は17勝9敗。先手番は24連勝中だが、後手番では連敗が続き「後手番限定スランプ」ともささやかれていた。羽生の挑戦を受ける王将戦7番勝負では2勝2敗と激闘を繰り広げているが、2敗はいずれも後手番だった。

ハードスケジュールの中、「藤井対策」を強化する相手の戦法への準備に時間が足りないともみられていたが、王将戦7番勝負第4局の後手番の敗戦から約1週間、しっかりと立て直してきた。

開幕2連勝で棋王初奪取と羽生以来の史上2人目の6冠達成に王手をかけた。羽生は当時24歳だったが、藤井はまだ20歳だ。快挙がかかる第3局は先手番となる。「スコアを気にせず、全力を尽くして指したい」。一気に駆け上がる。【松浦隆司】

◆棋王戦 将棋の8大タイトル戦の1つ。序列は竜王、名人、王位、叡王、王座に次いで6番目(以下王将、棋聖)。全棋士と女流棋士、アマ名人が参加できる。予選トーナメントの通過者とシード者で本戦トーナメントを行って、挑戦者を決める。本戦ベスト4以上は棋王戦独自の「2敗失格制」というルールで、敗者復活戦がある。挑戦者決定戦は変則2番勝負。勝者組優勝者は2局のうち1回勝てば挑戦権を得られるが、敗者復活戦優勝者は連勝が条件となる。5番勝負は例年2~3月に開催。1990年(平2)の第15期では南芳一棋聖(当時)に3連敗したが、故大山康晴十五世名人が66歳11カ月の史上最年長で挑戦している。

【第48期棋王戦コナミグループ杯5番勝負・第3局以降の日程】

◆第3局 3月5日 新潟市「新潟グランドホテル」

◆第4局 3月19日 栃木県日光市「日光きぬ川スパホテル三日月」

◆第5局 3月29日 東京都渋谷区「東郷神社」