多くのファンから愛され続けた名馬ナイスネイチャが天国に旅立った。今回の「ケイバラプソディー」では、同馬のことが「一番大好き」というデビュー28年目のベテラン和田竜二騎手(45)を、マイクこと藤本真育記者が取材。少年時代の出会いを振り返ってもらい、同騎手が乗るディープボンド(牡6、大久保)とネイチャの不思議な縁にも注目した。

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ナイスネイチャが5月30日に35歳でこの世を去った。重賞4勝を挙げた一方で、有馬記念で3年連続3着(91~93年)に入るなどG1は未勝利だった。それでも懸命に走り続けた姿がファンの心を打ち、当時から引退後まで絶大な人気を誇った。

デビュー28年目のベテラン和田竜騎手も、その魅力に引き込まれた1人だった。「ナイスネイチャは俺の“青春”だった。ヒーローだったし、大好きな馬だった」。騎手を目指したきっかけも同馬の存在が大きかったという。

運命の出会いは30年以上前。当時、小学6年生だった“和田竜二少年”は、松永善晴厩舎の厩務員だった父・守さんに連れられ、厩舎によく足を運んでいた。そこで目にしたのがナイスネイチャだった。

「格好いい馬で、よく触らせてもらった。担当の馬場さん(厩務員)にもお小遣いや、お菓子をもらったりしてかわいがってもらっていたよ(笑い)」

いつも一生懸命に走る姿にも魅了され、よく競馬場を訪れた。「オグリキャップもそうだけど、自分の中でのアイドルホースはナイスネイチャだった」。昨年には、余生を過ごしていた浦河・渡辺牧場へ会いに行ったほど大切な存在。そんなネイチャが旅立った。

「大往生だった」

そう言った和田竜騎手だが、いろいろな思い出がよみがえったのだろう。その表情はどこかさみしそうだった。

和田竜騎手が主戦を務めるディープボンドという馬がいる。昨年、京都競馬場主催のアイドルホースオーディションで3位に輝いた人気馬だ。国内外で重賞4勝を挙げる一方で、G1は未勝利。天皇賞・春では21年、22年、今年と3年連続で2着に惜敗している。ついついナイスネイチャの姿を重ねてしまう。

実はそのボンドが、ネイチャの偉大な記録を抜いていた。今年の天皇賞・春2着によってJRAでの獲得賞金が6億3654万600円となり、ナイスネイチャ(同6億2358万5600円)を超え、G1未勝利馬のJRA歴代獲得賞金ランキング1位になったのだ(海外G1・1勝のステイゴールドは除く)。

「G1でもやれていい馬だから」。和田竜騎手は以前からこう話している。憧れたナイスネイチャがかなえられなかったG1制覇を、自身が手綱をとるボンドで-。次に人馬が挑む25日の宝塚記念で、そんなドラマがあってもいい。

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)

91年、手入れをされ気持ちよさそうなナイスネイチャ
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