数々の活躍馬が世界へ。北海道安平町にある追分ファームからは、17年マイルCS覇者ペルシアンナイト、22年マイルCS覇者セリフォスなどG1馬が多数誕生している。今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」は、追分ファームの調教部門として11年に開場した育成牧場・追分ファームリリーバレーをマイクこと藤本真育記者が取材。多数の活躍馬を輩出する施設の秘密に迫った。

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追分ファームからはこれまで、多くのトップホースが誕生した。03年フェブラリーSを勝ち、種牡馬としても活躍したゴールドアリュール、国内外でG1を制したハットトリックに、現役馬では昨年のマイルCS覇者セリフォスなど一流馬がズラリ。そんな追分ファームに、調教施設として11年に開場したのがリリーバレーだ。

そのリリーバレーは主にデビュー前の1、2歳馬の育成と、デビュー後の競走馬の休養地として使われている。全長1000メートル超の屋根付き坂路をはじめ、屋内1000メートル周回のダートコースに、ウオーキングマシンやトレッドミルなど、普段取材している栗東トレセンと同様の充実した設備が整っている。牧場全体が広々としていて、夏の暑さも吹っ飛ぶほどの爽快感があり、気温も札幌と比べるとかなり低く感じる。馬にとっても過ごしやすく、いい環境なのは間違いない。

坂路コースを見学した時にちょうど、ガイアフォースとイルーシヴパンサーの重賞馬2頭が元気よく駆け上がってきた。軽快に走っていたが、同事務局の井上朋哉さんに聞くと「スタートは平たんですが、そこから傾斜が2%になり、一番(距離が)長い傾斜4%を経て、ゴール後には傾斜6%となります」とのこと。栗東トレセンの坂路が前半2%、中盤以降は3・5%→4・5%の傾斜ということを考えても、しっかり負荷がかかっていることがわかる。

牧場のコンセプトが「成長を阻害せず、最大限の負荷をかける」というもの。「馬とのコミュニケーションを図り、ゆったりと長い距離を走ってもらう」という目的で使用されるダートコース、「調教で煮詰まらないようリフレッシュを図る」というトレッドミル、さらにウオーキングマシンを組み合わせ、日々の調整を行っている。現在120馬房もある調教厩舎にも足を運んだが、どの馬も穏やかな表情をしていて、いい雰囲気だった。

リリーバレー育成馬は、ペルシアンナイト、ルヴァンスレーヴ、タイムフライヤー、そしてセリフォスと実績を残してきた。立派で壮大な施設に実際に触れてみると、活躍できる理由が分かった気がする。夏にこの地で休養して調教した馬、育成された馬は、この秋のG1でも注目していきたい。

◆追分ファームとリリーバレー 追分ファームは北海道安平町に、95年に開場した。現在は生産牧場として、100頭近くの繁殖牝馬をけい養している。追分ファームリリーバレーは追分ファームの調教施設として11年に開場。現在は調教厩舎120馬房、イヤリング(調教厩舎に移動するまでの1歳馬を育成)厩舎86馬房を有している。

◆追分ファームの主な活躍馬 追分ファームの生産馬、育成馬でJRA・G1を制した主な馬はゴールドアリュール(03年フェブラリーS)、ハットトリック(05年マイルCS)、ソングオブウインド(06年菊花賞)、レジネッタ(08年桜花賞)、フェノーメノ(13、14年天皇賞・春)、タイムフライヤー(17年ホープフルS)、ペルシアンナイト(17年マイルCS)、ジュールポレール(18年ヴィクトリアM)、セリフォス(22年マイルCS=現役)。

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)

追分ファームリリーバレーで坂路調教を終えた育成馬(提供写真)
追分ファームリリーバレーで坂路調教を終えた育成馬(提供写真)