父を超える逸材だ。競馬の祭典、日本ダービー(G1、芝2400メートル、6月1日=東京)が今週末に迫ってきた。
かつて07、19年にダービー制覇を遂げた角居勝彦元調教師(61)は、現役時代に自身が手がけたG1馬リオンディーズの産駒ミュージアムマイル(牡、高柳大)に注目している。コラム「Thanks Horse」で、16年に5着だった父より「バランスが整っていて完成度が高い」と評価。牧場を営む石川県珠洲市からエールを送った。
今年もダービーウイークを迎えました。皐月賞馬のミュージアムマイルは、私の厩舎にいたリオンディーズの子供なので、やはり注目しています。
リオンディーズは私にとって縁の深い血統です。お母さんのシーザリオは日米でG1を勝ってくれただけでなく、リオンディーズとその兄エピファネイア、弟サートゥルナーリアと、3頭のG1馬を生んでくれました。クラシックを勝った兄や弟に比べれば、リオンディーズは実績で少し劣るかもしれませんが、能力やパフォーマンスは決して負けていなかったと思います。
エピファネイアより小柄でしたが、体のバランスが良く、デビュー2戦目でいきなりG1の朝日杯FSを勝ってくれました。3歳になって芯が入ってくると、スピードのコントロールが難しくなり、能力に体が耐えきれず故障してしまい、結局はダービー(5着)が最後のレースになりました。無事ならもっと活躍できたと思います。
シーザリオはお母さんとして種馬の良さをうまく引き出してくれましたが、それはリオンディーズにも受け継がれているのではないでしょうか。産駒を見ても、天皇賞・春を勝ったテーオーロイヤルが出たり、ダートで重賞を勝つ馬がいたり、繁殖牝馬によっていろんなタイプの子供がいます。それは良い種馬の資質でもあります。兄や弟に比べて種付け料が安いのも生産界にとって魅力でしょう。
その代表産駒になろうとしているミュージアムマイルの体を見ると、同じ時期のお父さんよりさらにバランスが整っていて、完成度が高い印象です。胴に伸びがあって、柔らかく体を使えそうな感じなので、うまくためをつくれれば距離の融通も利きそうです。リオンディーズも無事であれば、こういう感じの馬につくりたかったなと思います。
ミュージアムマイルは、助手として私の厩舎にいた嘉堂さん(元障害騎手)の息子さんが担当していて、私が助手時代に松田国英厩舎で一緒だった友道先生(調教師)の息子さんが調教をつけていると聞きました。人も馬も血と縁でつながって、次の時代がつくられていくのは面白いなと思います。
鞍上のレーン騎手には19年のダービーでサートゥルナーリア(4着)に乗ってもらいました。当時はまだ日本の競馬に慣れておらず、戸惑いもあったように思いますが、今ではそんな心配もないでしょう。2年前にはタスティエーラでダービーを勝ち「テン乗りでは勝てない」というジンクスも破りました。
昨年はエピファネイア産駒のダノンデサイルが勝ち、シーザリオの血を引く初のダービー馬になりました。今年も産駒のジョバンニがいますし、新種牡馬のサートゥルナーリアもショウヘイとファンダムを出します。3兄弟で切磋琢磨(せっさたくま)して頑張ってほしいです。
今は気楽な立場で応援できます。それが調教師をやめてよかったことの1つです(笑い)。(JRA元調教師)
◆この日のミュージアムマイル 月曜は栗東トレセンの調教全休日とあって厩舎で静養した。牡馬クラシック2冠を目指し、中間は前走・皐月賞以上の気配を示している。友道助手は「前走時の1週前追い切り後は少し疲れが出たけど、今回は同じくらいの時計で追い切っても疲れを見せず、走れる態勢にある。日曜(25日)の動きも良かったし順調です」とうなずいた。皐月賞馬として主役を務める大一番が近づく。
◆馬名の意味 米ニューヨーク、マンハッタンの5番街にある通り。美術館や博物館が集まる地域
■珠洲市で営む牧場 震災から復旧へ
角居氏が営む珠洲ホースパークでは、JRAと市からの支援を受けて震災被害復旧と新厩舎建設の工事が始まろうとしている。さらに日本財団の助成により、敷地内にコミュニティー施設「鉢ケ崎のみんなの家」が着工する予定になっている。「食事しながら馬を見られたり、ホースセラピーができたり、地域に密着できればと思います。放牧地も大きくなりますし、新しい厩舎も来年春には建つのでは」。牧場の充実を心待ちにする。









