腕っぷしで歴史を塗り替えた。オーストラリアを拠点とする英国出身レイチェル・キング騎手(34)が女性騎手として史上初となるJRA平地G1勝利を挙げた。府中無敗の2番人気コスタノヴァ(牡5、木村)を初騎乗でG1初制覇に導いた。勝ち時計は1分35秒5。金曜夜にサウジアラビアで騎乗後、土曜夜に再来日。タフな日程をものともせず、2度目のJRA・G1騎乗で結果を出した。
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全力を尽くす。それが答えだ。直線残り350メートル。キング騎手が500キロ近いコスタノヴァを全身で奮い立たせる。右ムチ7発。砂をたぐり、迫る男たちを振り切った。ゴール直後は白い歯をこぼし、笑った。「いつもより直線が長かった(笑い)。でも自信がありました」。女性騎手がJRA・G1に初騎乗してから35年。日本競馬に新たな歴史を作った。
タフな任務をこなした。レース2日前の金曜夜。日本から時差6時間のサウジアラビアにいた。国際招待競走に参戦し4戦1勝で総合2位。そのまま現地時間の土曜午前3時55分発の航空機に飛び乗った。ドバイ経由で日本時間土曜午後10時半に羽田着。日曜は午前10時5分発走の1レースから乗った。「機内で寝ることが得意なんです。工夫? すっと寝るだけですよ(笑い)」。15時間以上の移動もへっちゃらだった。
土産話も役立った。サウジではコスタノヴァに6度乗ったルメール騎手に特徴を聞いた。「スタートは速くない時があるけど2、3完歩めでスピードに乗れる」。レースもその通りに出負けしたが、即座に挽回。馬群をぬって好位へ。余裕を持って追い出せた。「聞いていた通り乗りやすい馬。成長もしていましたね」。初コンタクトはレース直前でも、入念な下準備で対応した。
常に“女性”という枕ことばがついてくる。ただ、本人は「競馬は男女がイコールで戦える。意識していないです」と言い切る。事実、日本の女性騎手はG1を勝っていない。壁を破るには-。「ハードワーク。それしかない。女性でG1を勝てるということを見せましたし、どんな女性でもG1を勝つことができます。今日のことが刺激になってくれればうれしいです」。答えは単純明快。努力。ただ、それだけだ。【桑原幹久】
◆コスタノヴァ ▽父 ロードカナロア▽母 カラフルブラッサム(ハーツクライ)▽牡5▽馬主 吉田勝己▽調教師 木村哲也(美浦)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 10戦7勝(うち地方1戦0勝)▽総獲得賞金 2億4089万1000円(うち地方0円)▽馬名の由来 ポルトガル北部のリゾート地
◆女性騎手によるJRA平地G1勝利 女性騎手7人によるのべ14回目の騎乗で初勝利。これまでの最高着順は23年ホープフルS(アドミラルシップ)でのH・ドイル騎手の4着。なお、J・G1では02年中山大障害(ギルデッドエージ)でR・ロケット騎手が勝利している。

