<愛知杯>◇22日=中京◇G3◇芝1400メートル◇4歳上牝◇出走18頭

大外枠から抜群のスタートダッシュを決めた幸英明騎手(50)騎乗の12番人気アイサンサン(牝4、橋田)が逃げ切りで重賞初制覇を飾った。

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「心が折れました」

競馬界の鉄人でさえ、くじけそうな大けがだった。

ちょうど4カ月前、昨年11月22日の京都競馬場。落馬した幸騎手は、かつてない激痛と絶望に襲われていた。

「搬送されている時は『死ぬのかな』と思いました。お医者さんからも『15~20分遅かったら危なかった』と言われました」

肋骨(ろっこつ)10本、左鎖骨、左足首の骨を折った。肺挫傷も負い、圧迫された心臓が体の中央へ押しやられるほどだったという。

入院後もベッドに固定されて動けない日々が続いた。

「きつかったです。寝ようと思っても寝られなくて…。『このままやめようかな』という気になりました。これ以上、けがをしたら迷惑をかけるので」

何度も負傷を克服してきたベテランも、ついに引退を意識した。

そんな折れた心をつなぎとめたのが、長男の大斗(ひろと)さんだった。

「妻は『やめてもいい』と言っていたんですけど、息子に『デビューするまで乗ってほしい』と言われまして…」

自分の背中を追い、競馬学校の騎手課程で腕を磨いていた。

その言葉に奮い立ち、わずか2カ月でターフへ戻ってきた。そして手にしたJRA重賞50勝目。夢の親子対決をかなえるためにも、50歳のアイアンマンは、まだまだ父の威厳を見せてくれるに違いない。【中央競馬担当=太田尚樹】