全盛期の菅野を知っているだけに、さすがに今試合のピッチングは寂しく映った。2回2/3で5失点。首位阪神を逆転するには菅野の復調が必要不可欠。そう思っていたが、今のままでは難しいと言わざるを得ない。
好調時の面影があったのは「際どいコースをついていこう」という意識だけだった。菅野は好調時でも手を抜かず、どんなバッターにも際どいコースを狙って投げるイメージがある。「そんなにコースを狙わなくても打ち取れるのに」という感じ。やられる時は際どいコースを狙うあまり、無駄に球数が多くなってスタミナ切れしたとき。しかし今の球威では、いくらコースを狙っても厳しい投球になってしまう。
74球を投げたうち、真っすぐは14球だった。真っすぐで押せないだけに、少ないのは仕方ない。数よりも問題なのは、高めに浮くこと。低めのストライクゾーンに決まったのは1球か2球しかなかった。
真っすぐの使いどころも極端だった。打者の初球か2球目に投げたのが9球。若いカウントで真っすぐを使うのは、見せ球にしてツーシームとカットボールのコンビネーションで打ち取ろうとしたからだろう。しかし低めに決まらなければ、効果は上がらない。
球威があれば、それでもごまかせる。しかしバッターの立場から言うと、横の揺さぶりは低めの球より見極めやすい。人間の動体視力は横よりも縦の方がアバウトになりやすいのと同じ理屈。今の球威では高めには投げにくいし、真っすぐを低めのストライクゾーンに投げられなければ打ち損じの期待も小さくなる。
「丁寧にコースを突く」より「丁寧に低めに集める」が正解。バッターの特徴にもよるが、この日の菅野の状態なら「低めに投げる」に意識を集中させた方がよかった。コースを狙って球威を出そうとすれば必要以上に力み、体が開いて球筋が見やすくなる。高めにも浮く。コースは多少、アバウトになっても低めに投げれば、カットボールやツーシームの少し沈む変化が有効に使えたと思う。
一発の破壊力はあるだけに、巨人の課題は投手陣。今試合も秋広のホームでのスライディングが浮いてアウトにならなければ分からなかった。そんなに自分を追い込まず、低めへの意識を強く持って打線の援護を待つ。球威やコースを突くよりも低めに投げて我慢する。菅野にもチームにも再調整する余裕はない。それでもダメなら、逆転優勝を狙うより3位狙いに切り替えた方がいいだろう。(日刊スポーツ評論家)




