2回裏DeNA1死一塁、筒香は通算200号本塁打を放つ(撮影・足立雅史)
2回裏DeNA1死一塁、筒香は通算200号本塁打を放つ(撮影・足立雅史)

<DeNA-広島>◇17日◇横浜

DeNA筒香嘉智外野手(27)が、通算200号本塁打を達成した。17日の広島20回戦(横浜)の2回1死一塁、右翼へ今季24号2ランを放った。プロ野球8番目の年少記録で達成した強打者は、20年間無敗という伝説の「雀鬼」桜井章一氏の著書を愛読。進化を求め、変わり続ける生き方に影響を受けている。

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恩師の田代富雄、村田修一など。同じにおいを感じる勝負師の先輩に遠慮なく質問し、血肉としてきた。

グラウンドを離れれば、活字に教えを求めた。「こう見えて、本は読むんですよ。野球の本は一切読まないんですけど。もちろん最初は読むのは面倒くさかったけど、読み出したら、すごく面白いなって」。会社経営者の半生、マネジメント論…ジャンルは多岐にわたる。「読書、みんなに意外と言われますけど。どれだけ、しんどくても最低1日1ページって決めています。1カ月で2冊はいきますね」。自宅には、読了した本が山積みの段ボールにしまってある。

戦う本能を刺激する言葉を探す。その1人が、マージャン界の伝説で「雀鬼」と称される桜井章一。著書を読みあさった。「自分が通ってきた道。人間、本来こうじゃないかという部分」に共感した。20年間無敗の雀士が記した「考えを固定すると、モロい」の言葉が焼き付いた。変わり続けることが強くなるための宿命。確信し、実行に移した。

「常に進化したい」と前だけ見てきた。毎オフ、1年間積み上げて来た打撃フォームをぶっ壊す。「本当は1つにしたいけど。体のことも、いろんなことに挑戦している。常にうまくなりたい。こうしていれば、もっと成績が出たかなと思うこともあるけど…そこに怖さはない」。過去にはしがみつかない。今年もノーステップ打法から始まり、上書きし続けてきた。

「あの感触」があったからこそ、進化の歩みを止めないでいられた。プロ7年目の16年4月8日、横浜スタジアムでのヤクルト戦。エース小川から放った左翼ポール際へ運んだ通算70本目の1発。

「本当の意味での反対方向へ打つ感覚が、初めて出た。それまでは、反対方向に強く飛ぶ感覚がなかった。泳いでレフトスタンドくらい。ちゃんと右中間、ライトに打っている感覚で引きつけて打てた」

試合前打撃練習の始まりは、必ず逆方向。「レフトへ、右打者が引っ張ったような打球を打ちたい。左バッターの打球じゃなくて。難しいけど」。逆方向へも、突き刺すような放物線を探し続けている。

今年、手のひらに刻み込まれたのは5月24日の阪神戦。西の144キロ直球を左翼席中段へと放り込んだ1本だけ。まだ、求める境地にはたどり着かない。それでも「ずっとやり続けてきた。だから今がある。来年くらいには1つの打ち方でいけたら」と確信めいた予感はある。27歳、200本。「休みの時も、ずっと野球ですよ」。「豪鬼」筒香嘉智の歩みは続いていく。(敬称略)【栗田尚樹】

ヤクルト小川から左越えに通算70号を放つ筒香嘉智(2016年4月8日撮影)
ヤクルト小川から左越えに通算70号を放つ筒香嘉智(2016年4月8日撮影)