夢のマイカー通勤は、アタフタ劇場だった。今オフに教習所に通い詰め、運転免許証を習得したオリックス紅林弘太郎内野手(20)は、購入したばかりの愛車で3月上旬に本拠地の京セラドーム大阪に通勤した。

大阪・舞洲の球団寮から同僚の宮城と一緒に通勤し「宮城と…ですよ。めっちゃ怖かったです」と大汗をかいた。疑問だったので「一緒に…?」と尋ねてみると「はい! 宮城に先に行ってもらって、僕が後ろからついていく形です。でも、あいつ、どんどん先に行っちゃうんですよ。僕、置いていかれちゃって…」と困惑。野手は早出練習があり、初日は急いで球団寮を出たそうだ。「宮城は普通の時間で良かったんですけどね!」と紅林は満面の笑み。車内にカーナビを設置しているそうだが、同期入団2人で“一緒”に初のマイカー通勤がしたかったようだ。

一瞬で苦笑いを浮かべ「帰りも…。(ドラフト2位の)野口さんに先導してもらうつもりが…ですよ。あの人、京セラを出た瞬間、いなくなっちゃったんです」と眉間にしわを寄せた。球団寮への道のりは「何度もタクシーで通っていたので、道はわかっていました。(心配したが)1人で帰れたんで、大丈夫だなと自信が。1人で行くのが怖いだけなんで…」と20歳は頭をかいた。

1人が怖い理由は明確にあった。紅林は「僕、駐車が苦手で…」と明かす。愛車通勤の初日、京セラドーム大阪の駐車場で「10分、15分ぐらいかかりましたね」と話しながら爆笑。「朝一番に行って、誰もいない状態で止めようと思っていたんですけど…。僕が到着したら、もう、すでに結構、車が止まっていて…」。初出勤で慣れていない中、さらに難易度は増した。

「警備員さんに『ここね』って言われた場所が問題だったんです。横がレクサス。反対がベンツで…。当てたら終わりじゃないですか? 警備員さんに『いや、僕、無理ですよ!』って言ったんですけど…」

5分ほど地道にバック駐車を試みるも、なかなかうまくいかず「運転席の窓から警備員さんに『まじで助けてください!』って大きな声で言ったら、3人ぐらい駆けつけてくれたんです。協力してもらって、なんとか駐車できました。優しいですよね~」とニンマリ。表情を戻して「車の前と後ろに、ちゃんと初心者マークを張っています。やっぱマイカー通勤、うれしいですよね」と前髪をかき分けた。

ほんわか天然エピソード満載の“紅林劇場”は周囲を笑顔にさせてくれる。【オリックス担当=真柴健】