女子球界の「未完の大器」の三浦柚恵(ゆえ)投手(藤沢清流3年)が、U18女子日本代表トライアウトに参加した。

テスト会場には、春の選抜大会優勝の神戸弘陵や、夏の選手権を制した作新学院の中心選手ら、全国から41人が集結。その中でも三浦の体格は群を抜いていた。初日はシートノックや投内連係、投手はブルペン投球などで個人技術を確認。2日目に紅白戦での実戦テストを迎えた。

1回は打者3人で無失点に抑える上々の立ち上がり。ところが2回、先頭打者を投ゴロに打ちとった後でリズムが狂った。走者を置いたケースを見たかったのか、首脳陣の声で1死一塁からゲーム再開。セットポジションからの投球となった。「そこは全然、関係ないです」と強調したが、制球を乱し、四球に自らの暴投、失策も絡んで3失点。「さすがにレベルが高いですね。思うようなプレーができませんでした」と唇をかんだ。

トライアウト翌日、9月2日に発表された侍ジャパン女子代表20人のリストに、三浦の名前はなかった。憧れだった日の丸を背負うことはかなわなかったが、すぐに「プロテストを受けようと思っています」と気持ちを切り替えた。

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日本女子プロ野球リーグは、2010年(平22)に京都と兵庫の2球団で創設。度重なるチームの再編、移転などを経て、10年目を迎える今季は京都、愛知、埼玉の3球団で覇権を争う(京都本拠の「レイア」は育成球団)。初年度から毎年赤字収支が続いており、設立当初からの運営母体となる「わかさ生活」が、1社で約100億円という事業費を投じてきた。

今季の春、夏リーグ戦を終えた時点の入場者数は、昨年同期比で約2万人減という厳しい現状で、今後も新規企業の参入や、観客増による黒字化の見通しが立たなければ、リーグ存続の危機となる。

そんな「背水の陣」で戦う女子プロ野球の現場とは? 現在は秋季リーグ戦を開催中で、平日のナイター開催に足を運ぶと「男子」とはまた違う、非常に味わい深い光景が広がっていた。(つづく)

【鈴木正章】

◆三浦柚恵(みうら・ゆえ)2002年(平14)2月26日、横浜市戸塚区出身。小1から野球を始める。深谷中から藤沢清流へ。右投げ右打ち。177センチ、64キロ。家族は両親と兄2人、姉。血液型O。韓国のアイドルグループ、BTS(防弾少年団)の大ファン。

◆全国高等学校女子硬式野球連盟(JHGBF) 高校における女子硬式野球の発展を目的に1995年(平7)に設立された任意団体。現在27校が加盟し、準備校をあわせ37校が所属する。97年8月に第1回全国大会(現選手権大会)を開催、00年から全国選抜大会を主催する。本部は兵庫県伊丹市。坂谷高義会長。