野球界は今、データ分析にたけた人材など、テクノロジーや統計処理に精通する人材を求めている。「パ・リーグ 学生ベースボールアプリ選手権」では、将来の候補者になってほしい、非常に若い参加者も目立った。

パ・リーグ学生ベースボールアプリ選手権で優勝した海城中3年の勝山さん
パ・リーグ学生ベースボールアプリ選手権で優勝した海城中3年の勝山さん

優勝した勝山翔紀さん(15)は米国生まれで「さっきまで体育祭に参加していた」という海城中の3年生だ。参加者では最年少。プロ野球の本拠地球場のグルメを紹介するアプリを1カ月でつくった。昨年の12月にパソコンを購入したばかりで、週1回の学校の授業でプログラミングの基礎を覚えた。

中学から野球を始め、神宮球場でプロ野球を観戦した。「ネットで調べるのは面倒くさい。それに混んでいて買う気がうせたので、自分がほしいアプリ」をつくった。現段階では店舗紹介が中心だが、将来的には人工知能(AI)を使った推奨機能、ネット購入での店舗での食品受け取りなどへの拡張を見込んだ。

U-18賞に選ばれたLoohcs高等学院1年の中村さん
U-18賞に選ばれたLoohcs高等学院1年の中村さん

U-18賞に輝いたのは、Loohcs(ルークス)高等学院1年の中村耕盛さん(16)だ。俳優伊勢谷友介が発起人の同校は、一般の高校と違いビジネスやテクノロジーを学ぶ。中学3年からプログラミングを始めた中村さんは、ビジネスコンテストで最優秀賞を受賞した経験があり、中高一貫校から転身した。

最近、初めて観戦したプロ野球で「応援に感動した。エンターテインメントにしたら、もっと10代は見に来る」と感じた。10代に人気のある動画投稿アプリ「TikTok」(ティックトック)が浮かんだ。この2つを組み合わせ、応援動画を投稿し、対戦ができるアプリをつくると決めた。

応援動画の色、動き、言葉などをAIで自動解析して採点を行う。「梅雨時なら傘を使って」などテーマを与えたり、電光掲示板で優勝者の動画を発表するなど、球団との提携も考えられるという。

米大リーグでは、既にデータ分析が戦術や監督の選任にも影響を与えている。極端な守備シフト、打ち出し角度と速度に着目した打撃のフライボール革命などは、その表れだ。今回取り上げた2人は野球以上に宇宙、サッカーに興味があり、たまたま見つけた夏休みのプログラミング腕試しイベントとして、大会に参加した。来年には小学校でもプログラミングが必修となる。若きIT技術者が飛び込みたくなる、魅力あふれた野球界でありたい。(この項おわり)【斎藤直樹】